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Three Roses
第十四話 同じ父を持ちその九

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「新教と異教にも寛容であるべきだ」
「あなたは旧教の敬虔な信者では」
 実は太子は日々祈りを欠かさず聖書も愛読している、実は彼なりに篤い信仰心をその中に持っているのだ。
「そうではないのですか」
「そうありたいと思っている、だが」
「それでもですか」
「政治のことを考えるとだ」
「新教徒達も異教徒達も」
「認めるべきなのだ」
 信仰と政治を天秤にかけ政治を優先させた言葉だ。
「必ずな」
「左様ですか」
「私は彼等の信仰を認める」
 政治のことを考えてというのだ。
「そして異端審問もだ」
「反対ですか」
「そう言っておく」
「しかし」
 マイラはあくまで自分の考えを述べた。
「私は」
「そう言うのか」
「はい、どうしても」
「そうか、だが私は何度でもそなたに言う」
 自分達、ロートリンゲン家のものになるかも知れないこの国のことを考えてである。やはりあくまで政治を念頭に置いている。
「この国に異端審問を入れるべきではない」
「寛容であるべきですか」
「そうだ、絶対にな」
 こう妻に強く言う、だがマイラはそれでもだった。 
 あくまで自分の考えを曲げない、太子の言葉も退けてだった。
 異端審問の者達とも結んでいた、彼女のこの動きは王も気付いていた。それで側近達に懸念する顔と声で言った。
「マイラは危ういな」
「はい、旧教の諸侯と懇意であられるだけでなく」
「近頃は異端審問の者達ともです」
「旧教の諸侯達はまだいいですが」
「異端審問の者達は」
 側近達も口々に言う。
「あまり、です」
「懇意にすべきではないですが」
「あの方はあまりにも旧教にこだわっておられます」
「それが強過ぎます」
「異端審問の者達は危険だ」
 王は強い声で言った。
「これは兄上、いや父上の御代からの伝統だが」
「この国で異端審問はさせない」
「魔女狩りもまた」
「そうだ、させない」
 断じてというのだ。
「教皇庁の猟犬達の好きにはな」
「それではですね」
「あの者達をこの国から出しますか」
「そうしますか」
「そうしたいが」
 しかしと言うのだった。
「だがな」
「それは、ですね」
「容易ではないですね」
「彼等の後ろには教皇庁がいる」
「だからこそ」
「そうだ、教皇庁はだ」
 彼等はとだ、王は言うのだった。
「この国からも完全に出すことは出来ない」
「力があまりにも強い」
「それ故にですね」
「教皇庁の力を完全に排除出来ない」
「だからこそ」
「教皇庁を完全に排除出来ない、敵に回すこともだ」
 それもというのだ。
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