第十四話 同じ父を持ちその八
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「異端審問もだ」
「あの者達もまた」
「この国に入れるべきではないと考えている」
「では」
「妃にもだ」
「言われますか」
「必ずな」
太子の考えは変わらなかった。
「異端審問は入れさせない」
「何があっても」
「そのつもりだ」
「左様ですか」
「私の子、ロートリンゲン家の為に」
何としてもというのだ。
「教皇庁は入れない」
「ですか」
「旧教は守るべきでもな」
「帝国と教皇庁は違う」
「そういうことだ、旧教徒であろうとも」
信仰は同じである、そしてお互いに助け合う関係であるがそれでもだというのだ。太子は司教にそのことも話した。
「言っておく」
「では」
「少なくとも私が出来る限りではな」
何としてもというのだ。
「この国においてもだ」
「異端審問の好きにはさせない」
「そうする」
「ですか」
「そういうことだ」
こう話して実際にだった、太子はマイラに傷ん審問とは関わるな、手を組むなと話した。だがそれでもだった。
マイラは頑なな顔でだ、彼に答えたのだった。
「いえ」
「聞けぬか」
「彼等はです」
「旧教の者達でか」
「猊下の忠実な僕ですのね」
それ故にというのだ。
「私は彼等の力を借りたいのです」
「新教徒達や異教徒達が気になろうともだ」
それでもと言う太子だった。
「ある程度以上はだ」
「放っておけとですか」
「そうすべきだ」
こう率直に言った。
「その方がいい」
「寛容ですか」
「そうだ」
その通りというのだ。
「君主ならばだ」
「そうあるべきであり」
「新教徒も異教徒もだ」
彼等はというのだ。
「そのままでいい」
「抑えつけずに」
「このままでいい」
またこう言った。
「現状でな」
「ですが」
「そなたとしてはか」
「はい、信仰は唯一です」
強い、揺ぎのない声での言葉だった。
「旧教のみです」
「だからか」
「私は新教も異教も許せないです」
その存在自体がというのだ。
「ですから」
「彼等を許さず」
「はい、異端審問も使います」
その彼等をというのだ。
「彼等も」
「あくまでそう言うのか」
「なりませんか」
「私は賛成出来ない」
太子は信仰ではなく政治を念頭に置いてマイラに答えた。
「到底な」
「そうなのですか」
「何度も言う、異端審問と関わらずにだ」
そのうえでというのだ。
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