優しさに触れる
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じゃあなくなってたら親に言われるんじゃないの」と問えば、「カトレーン嬢に差し上げたと言えば文句は言えないでしょう」と返ってくる。
もうコイツは単純に帽子を押し付けたいだけなのではないか、とティアが疑い始めた頃に、少年は僅かに微笑んだ。
「それに…それで貴女が少しでも思い悩まずにいられるなら、その方がいいですから」
――――きっと、彼は何も知らずに言ったのだろう。
「どうして顔を隠したいのかも、心配する事に疑問を抱くのかも、解りません」
現に彼は、解らないと言って。
「初めてこのお屋敷に来て、貴女の事も存じ上げなくて、何をすればいいかも解らなくて」
それでも尚、柔らかく微笑んだまま、少年はこう続けた。
「解らないから…解らないなりに、貴女の助けになりたい」
そう言って。
少年は、己の胸に手を当てて――――。
「×××、××××××××××××」
ジュビアを見送って、体を投げ出すようにソファに座る。ふーっと息を吐いてから、膝を抱えて座り直した。日焼けとは最も縁遠そうなほど色白な足を抱えて、ティアは思い出に思いを馳せる。
あれが所謂恋なのか、話した今でも解らない。ただ、心配してくれた事、初対面の奴相手に帽子をくれた事。助けになりたいと、言ってくれた事。それが嬉しくて、ただ怪我の心配をされた程度の事が、こんなにも忘れられなくて。
「うわ…我ながら単純すぎるんじゃないの、私」
優しくされたくらいで十三年間ずっと覚えてるとか……と頭を抱えそうになりながら、それでも忘れられないのは……なんて、そんな理由は解らないのだけれど。
冷め切っていたあの頃を少しでも温めてくれた思い出を大事そうに噛みしめて、ふと呟く。
「でもあの人……あの時何言ったんだったかしら」
―――――さあ、キミは満足してくれたのかな。
全てはキミが満たされるか否か。満たされたのなら極上の作品、満たされなければ駄作中の駄作。ボクがどう思ったかなんて重要じゃないんだ。
……そっか、それならそうなんだろうね。
キミの言葉をボクは尊重しよう。だって他でもないキミが言うのだから。
これで、この物語はおしまい。
さあ、次に行こうか。
次の物語は、キミを満足させられるのかな。
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