巻ノ五十七 前田利家その十
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「助五郎殿の言われることもっとも」
「何とか新九郎様はお助けし」
「北条家は残す」
「そのことはですな」
「最初からそうあるべきだったし出来る」
出来た、ではなかった。今の言葉は。
「今もな」
「では関白様にもですか」
「その様にお話されますか」
「新九郎様だけはお助けをと」
「そして北条家も」
「相模と伊豆はもう無理だが」
領地、北条家のそれを守ることは適わずともというのだ。
「しかしじゃ」
「それでもですな」
「新九郎様とお家は何とかなる」
「だからこそ」
「我等もその為に動こう、しかし」
ここでだ、家康は己の家臣達にこうも言った。
「新九郎殿ご自身がな」
「その様に動かれる」
「ご自身で、ですか」
「そうされますか」
「わしが見た通りの方ならな」
氏規、彼がというのだ。
「必ずそうされる」
「ですか、それでは」
「我等はとりなしですな」
「それを関白様に行う」
「そうしますか」
「うむ、それで充分であろう」
氏直が家康の見た通りの者ならというのだ。
「我等が強く動かずともな」
「新九郎様が動かれる」
「ご自身で道を開かれる」
「そうされますか」
「だから不安はない」
それはというのだ。
「わしにもな」
「わかりました、では」
「その様にですな」
「殿も動かれますか」
「その様にな、出来れば北条殿もと考えていたが」
氏政のことだ、家康は彼にも思うことがあり言うのだ。
「それは無理であるな」
「どうしてもですか」
「それはですな」
「北条殿は」
「そうなろう、それでじゃが」
ここでまた言った家康だった、今度言うことはというと。
「我等は箱根を越えればな」
「はい、それからですな」
「小田原を囲む」
「そうしますな」
「その時に凄いことがある様じゃ」
こう家臣達に言うのだった。
「どうやらな」
「というとすぐに攻め落とすのではなく」
「小田原城を囲みですか」
「そしてですか」
「あるのですな」
「関白様が何かされる」
家康は家臣達に確かな声で言った。
「先程お会いした時に楽しそうに笑っておられた、その笑顔はな」
「まさにですか」
「考えておられるお顔」
「凄いことを」
「うむ、だからじゃ」
その笑みを見ての言葉だった。
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