巻ノ五十七 前田利家その八
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「そして海からも完全に囲む」
「あの城をですか」
「我等の本城を」
「うむ、そうしてくる」
「しかし殿」
家臣の一人が氏規にここで問うた。
「如何に大軍で囲んでも」
「あの城はじゃな」
「はい、陥ちる城では」
「兵糧も何年分もあります」
別の家臣も言う。
「では」
「陥ちぬというのじゃな」
「そう思いますが」
「あの城は」
「確かにあの城は見事な城じゃ」
氏規自身も言う、彼の居城において。
「謙信公も信玄公も攻め落とせなかった」
「はい、そうです」
「あの方々を以てしてもです」
「謙信公の時は十万の大軍で囲まれましたが」
「それでも」
「そうじゃな、しかし城は陥ちぬが」
しかしというのだった。
「人はどうじゃ」
「人ですか」
「人はどうなのか」
「そのことですか」
「城を守るのは人じゃ」
まさにというのだ。
「人の心を攻めればどうか」
「その時はですか」
「どうなるかわからない」
「殿が仰ることはそういうことですか」
「城を守る人ですか」
「関白様は城攻めの名人じゃ」
氏規は秀吉の評判をよく知っている、実際に彼は城攻めにおいては常にその知略でその都度様々な攻め方で陥としているのだ。
それでだ、今もこう言うのだ。
「小田原城とてじゃ」
「あの城もですか」
「天下の名城ですが」
「それでもですか」
「人を攻めればですか」
「攻め落とせるのですか」
「城を守るには様々な条件が必要じゃ」
氏規は袖の中で腕を組み言った。
「御主達が言った様に兵糧が必要で堅城であること」
「そして兵も必要ですな」
「その城を守るだけの」
「そうじゃ、そして外から援軍が来ることじゃ」
このことも大事だというのだ。
「これは我等が務めるが」
「いざという時はですな」
「そうしますな」
「是非共」
「ご本家をお助けに参りますな」
「しかし小田原城を囲んだうえで周りの城を攻め落としていく」
北条家の領内の城達をというのだ。
「そうすればどうじゃ」
「それは」
「そうなりますと」
家臣達はその状況を聞いて言った。
「援軍もなくなり」
「まずいですな」
「そのうえで小田原を囲んでいくとじゃ」
まさにというのだ。
「辛くなるぞ」
「ですな、言われてみれば」
「二十万の大軍ですし」
「そうした攻め方も出来ますな」
「殿の言われる通り」
「しかも関白様は謀も得意じゃ」
秀吉のこのことも言うのだった。
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