暁 〜小説投稿サイト〜
真田十勇士
巻ノ五十七 前田利家その七
[1/2]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
「遠慮はいらぬ、どんどんな」
「飯をですか」
「食えと」
「たんと食ってじゃ」
 笑ってそうして言うのだった。
「そのうえでな」
「戦の場で、ですな」
「戦えというのですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「ではな」
「はい、それでは」
「お言葉に甘えまして」
「食おうぞ、無論わしも食う」
 他ならぬ利家自身もというのだ。
「そうするぞ」
「飯はたんとあります」
 奥村がここでまた言って来た。
「ですから」
「うむ、ではな」
「たんと召し上がられ」
「そしてじゃな」
「戦われて下さい」
「そうするか、この度の戦で天下が一つになる」
 天下統一、それが成るというのだ。
「だからこそな」
「たらふく食いそのうえで」
「思う存分戦おうぞ」
 こう言ってだ、実際にだった。
 利家は信之達にも飯を食わせ自身も相当に食った、それがこの昼だった。
 その飯の後でだ、自身の軍に戻ってだった。幸村は十勇士達に言った。
「前田殿とお話してきたが」
「はい、如何でしたか」
「どうした方でしたか」
「噂以上の方であった」
 まさにというのだ。
「大身のな」
「ですか、やはり」
「そうした方でしたか」
「天下の前田家の主に相応しい」
「そうした方でしたか」
「うむ」
 その通りだとだ、幸村は十勇士達に答えた。
「実にな」
「そして、ですか」
「その方とお話が出来てですか」
「殿もよかった」
「そうだというのですな」
「大きなことを話して頂いた」
 こう言うのだった。
「実にな」
「それは何より、それではですな」
「その前田殿と共にですな」
「我等もいられる」
「有り難いことに」
「そうなる」
 まさにというのだ。
「だからな」
「はい、このままですな」
「我等は関東に入り」
「そして上杉殿、前田殿と共に戦う」
「そうしていくのですな」
「うむ、そうなる」
 まさにというのだ。
「では再び行くぞ」
「進軍ですな」
「それの再開ですな」
「もうすぐ父上も来られる」
 昌幸もというのだ。
「だからな」
「その時にですな」
「父上にお会いしようぞ」
「さすれば」
 幸村も頷く、こうした話もしつつ彼等も関東に進んでいく。その彼等の動きは北条家の方でも察していてだった。
 氏規はその話を聞いてだ、己の家臣達に苦い顔で言った。
「こうなることを恐れておった」
「殿はですな」
「そうなのですな」
「そうじゃ」
 まさにというのだ。
「総勢で二十万じゃな」
「はい、それ位になります」
「恐ろしい数です」
 家臣達も答える。
「北陸からも東海からもです」
「押し寄せてきています」
「おそらくじゃ」
 氏規はあらためて言った。

[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ