譲り特急
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田、越峰曇天山、越峰鷲巣、終着の大滋温泉です」
その他にも、列車が何両編成だとか、トイレが何号車にあるかなど放送していたが、あまり聞いていなかった。1つ驚いたことがあった。
「次、国府原まで停まんないのか?」
「そう。けっこう停まらないでしょ?」
国府原は、都京からかなり離れた場所にあったと思う。さすがに100kmは離れていないと思うが、50km以上は離れていたと思う。この間にはけっこうな主要都市もあったと思うが、全部無視するらしい。
これこそ特急列車の特権だと思う。特急列車が停まらない駅は、ある意味では自分の意見を飲み込み、特急列車を優先しているのだと思う。
自分が優先されていると思うと、突然ワクワクしてきた。
「まもなく、国府原に到着します。お出口は、右側です」
そう自動放送で流れてきた。もうすぐ国府原に着くらしい。
ここまでの行程はなかなか面白かった。都心を走っている時は、前の列車が詰まっているせいで遅い速度でノロノロと走っていたが、それでも列車を抜かせる駅を通る度に1本ずつ確実に前の列車を抜かしているので、自分が優先されている事を実感できた。
都心を抜けてからは、かなりの速度で走り、数々の駅を飛ばしていった。かなりスピード感があったし、優先されたことで短い時間で目的地に近づいていると感じたのだ。
ふと視線を横にやる。金古は分厚い時刻表とにらめっこしていた。駅名と時刻がひたすらに羅列されたページが一瞬目に入ってくる。自分が乗っている列車が、何時にどこに停まるのか確認しているのだろうか。
車の運転とは違い、列車は発車する前から既に到着時刻が決められている。それを思う時、ふと、特急列車に乗っている自分が優先されているのが錯覚なのではないか、と感じてしまった。
俺は、自分が優先されているから通常よりも早く次の駅に着いたと思っているが、時刻表の上では『通常よりも早く着く』という偉業が、最初から予言された決定事項なのである。
言うなれば、努力によって己の限界を超えた自分の前に、神が突然現れて「お前が限界を超えることは最初から決まっていた事だから。別にすごい事でもなんでもないよ」と言われたような気分である。
そんなメルヘンな想像をしていると、俺の視線に気がついた金古が声をかけてきた。
「国府原から先は、単線なんだよ」
「単線?」
「都会を走る鉄道のほとんどは、上り列車と下り列車で線路が分かれてるでしょ? あれを複線って言うんだけど、逆に列車が少ない田舎は、1つの線路を両方の列車が走るんだ。これが単線」
「それって、反対方向から来る列車
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