55.第五地獄・天網恢界
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のだろうか――?疑問に思いつつも鎖を改めて腕に巻こうとしたリリは、やや間を置いてもう一つの事実に気付かされた。
「あれ、鎖が綻んでる………?おかしいなぁ、これ不壊属性一歩手前の強度だって触れ込みだったんだけど……」
鎖の一部がひん曲がり、ブレスレットとしての機能を果たせなくなっている。最近は日常を穏やかに過ごしているリリにはこの鎖が壊れるような荒事に出くわした記憶はないし、まして自分で壊すような真似もしていない。そもそも、この鎖はそんじょそこらの破壊方法では傷も碌につかない代物だ。壊れる理由が分からない。
ううん、と唸り、ふとある可能性に思い当たる。
この鎖はアズの魂が源になっているというのをいつか聞いた。だから鎖に何かあったのだとしたら、それはアズの魂に何かが起きているからかもしれない。例えばダンジョン内で――そう考えかけたリリは、はっとしてぶんぶんと頭を左右に振った。
(アズ様が負けたりケガしたりする筈ない……だってアズ様はリリなんかと違っていつも強いんだから。だからあと何日かしたらいつもの緩い笑顔でリリたちのところに戻ってくる)
ほんの少しだけ脳裏を過った不吉な想像を頭から追い払い、リリは鎖をぎゅっと握りしめた。
「でもやっぱりちょっと心配だから………この鎖に祈ったら、アズ様に通じるかな………?」
あまり宗教に関心がなかったリリが辛うじて覚えている、小人族の神への信仰方法――鎖を両手で包むように指を組み合わせて顔の前に持ってきたリリは、静かに頭を垂れて祈りを捧げた。
神に届かなくともいい。
神よりよほど大事な存在の為に、祈るのだ。
ただ、無事でいてほしい人に届きさえすれば――。
= =
「――に渡す余――……まの俺たちにあると思って……――!?」
薄れる意識、断続的に降り注ぐ途切れ途切れの言語。
「そんなこ……――、……まじゃ本当に死ん――!!見捨て……――!?」
霞んだ記憶と、もっと霞んで半分真っ黒に染まった視界。
「――で俺たちが争――……、……は本当に手遅れになっちま……――!!」
体を流れ落ちる冷たいなにかと、体を流れ落ちる熱いなにかが混ざり合ったものが背中を濡らす。
「だったらおま……―――よ!!――魔になるなら………くぞ!!――………っていられ――!!」
声を出そうと息を漏らしても、小さくかひゅっと音が鳴るばかり。
『………閣府は自衛………決定しま――……依然強風と氾…………――無事を願うばかり………』
立ち上がろうと思って動かした脚には、何の感覚もなくて――
『――
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