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俺達は何を求めて迷宮へ赴くのか
55.第五地獄・天網恢界
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う生きてはいないという事なのだから。
 だから、ここで死ぬのが宿世というならここで死ぬのが人生の道理だ。


 でも、それでも――。


「………悪い、『死望忌願』。お前の力、抗うために使わせてくれ」
『――??? ???』

 俺は、オーネストと二人なら勝てない敵はないと思っている。これは自惚れだが、本気だ。
 だから、俺とオーネストのどちらかが欠ければこの天を舞う黒竜に勝つことはできない。
 何故なら、あれに勝つのはきっと『不可能』に類する絶対的な存在だから。

 俺は、オーネストと一緒にこいつを倒したい。
 生き残ってまた馬鹿な会話をしたい。
 友達(オーネスト)が死ぬという事実を、俺は何が何でも実現させたくない。
 オーネスト、お前はまだまだ生きるべきだ。

 生きて世界を歩き続け、いつかどこか――お前が救われる場所に辿り着くべきだ。

 それが俺の、お前の意見などまるで無視した一方的で勝手な願望。

 反論もなにも聞いていない、お前を生かすという俺の決定事項。

「やるぞ、友達」
「アズ、お前に一言言っておきたいことがあった」
「……こんな時にいきなりなんだよ」

 黒竜を見上げるオーネストの表情は見えないが、俺はオーネストが何かを明確に俺に伝えようとしている気がした。オーネストの「聞いてほしい」という言葉になっていない意志が、俺とオーネストの周囲に流れる時を一瞬だけ止まった気がした。

「俺は、ときどきこう思うんだ。……――」

 オーネストの口が動こうとしたその瞬間――止まった俺たちの時を引き裂く衝撃波がダンジョン第60層に絨毯爆撃のように降り注いだ。

 

 俺がオーネストの口からその言葉を正しく聞き取れたのは――それからずっとずっと後の事。



 = =



 ちゃりん、と足元で音がしたのを聞き、リリルカ・アーデは朝食のハムパンを食べ歩く足を止めた。
 音の正体を探る視線が足元に注がれ、原因を探る。音の正体はあっさりと見つかった。リリは食べかけだったハムパンの残りを素早く口に頬張り、ハムスターのように頬を膨らませながら原因を拾い上げた。
 今は人の体温程度に暖められた、金属らしき鈍色の連なり。持ち上げるとじゃらら、と小さな摩擦音を立てたそれは、リリがアズに受け取って以来腕に巻き付けっぱなしだった鎖だった。

「………?」

 ハムパンの残党を飲み込みながら、思わず首をかしげる。この鎖は金属とは思えないほど肌にフィットし、決して締め付け過ぎず、かといって緩み過ぎない絶妙の幅を常に保って腕に収まっていた。そういう不思議な鎖であることはアズの言動からなんとなく悟っていたし、これまで無意識に取り落としたことなど一度もない。
 なぜ急に外れた
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