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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第四章 魔族の秘密
閑話 ルーカス、自宅に帰る
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に備えなければならぬときです。魔王様に元気がないと兵の士気にも響きますので、どうかお気を落とされませぬよう」

 ルーカスはそう言って慰めたが、魔王はやや下を向いたまま再度小さく「悪かった」とつぶやいた。

 ガラガラ――。

 玄関の引き戸を開ける音がした。
 そして、やや高めの「おはようございます」という声。

「あら? 誰かいらしたようですわね」

 シルビアは様子を見にいこうとした。
 しかし彼女が立ち上がるよりも早く、部屋の入口に黒髪で丸顔の少年が姿を現した。

 その少年は、この部屋にいる全員をサッと確認すると、「失礼します」と中に入ってきた。
 そして魔王のすぐ近くまで行き、正座した。

「まおうさま、リンドビオルさま、カルラさま、メイドさま、おはようございます」

 少年は全員に挨拶をした。
 四人は一同顔を見合わせ、首をかしげる。

「お前は?」

 すぐ横に来られてしまった魔王が、少年のほうに体を向け、声をかけた。

「まおうさま。私はフィンと言います」
「え、誰だよ」

「はい。お城にいちばん近い鍛冶屋の次男で、もうすぐ十三さいになります」
「いや、知らないし。自己紹介されても困る。城に来たことないよな?」
「はい、お初にお目にかかります」
「だよな……。いったい何の用なんだ」

「今日はマコトさんの弟子にしてもらうためにきました」
「……!」

「軍はもう帰ってきていると聞きまして、さっきちりょう院のほうに行ったのですが、あいにく今日はお休みのようでした。
 なのでマコトさんはこちらにいらっしゃるのかなと思い、お休み中に申し訳ないのですがここまで来ました」

「……そうか」
「マコトさんには今十五人の弟子がいると聞きました。ぜひ私を十六人目の弟子にしてほしいです。お願いします」

 そう言うと、少年は魔王に頭を下げた。そして、ルーカスやカルラ、シルビアに向けても順番に頭を下げていく。

「それは……無理だぞ」
「私の父は以前マコトさんに腰を治してもらって、そのおかげで仕事に復帰することができました。ぜひ私もその技術を学びたいのです」
「悪いな。それでも……もう無理なんだ」

 少年は食い下がった。

「一生けんめい働きます。なのでお願いします」
「無理だ!」
「なぜ無理なのですか」
「あいつはもういないんだ!」

 魔王は、目の前の少年を抱きしめた。

「まおう……さま?」
「あいつはもう……いないんだ。わたしのせいで……人間に捕まって……」
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