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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第三章 領土回復運動
閑話 勇者 ―決められていた道―
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 カミラは、陣地から外城壁を眺める。

 魔国の中では最も堅牢と言われる、リンブルクの城壁。
 城のスペックもさることながら、今回は魔族の兵が段違いに手ごわい。
 魔力が尽きる気配もなく、士気も今まで見た中で一番旺盛に見える。

 マコトは、前回の戦では実験的≠ノ軍に参加していると言っていた。
 また、彼が持つマッサージという技術――それは魔族に対して色々な効果があり、魔国は今その技術を必要としている、と……。

 前回、ノイマールの会戦での追撃戦で、手こずったこと。
 そして今回の、リンブルク攻城戦の苦戦。
 どちらもマコトの影響に違いないと、カミラは考えていた。

 人間の国での勇者、そして魔族の国でのマコト。

 ――担っている役割は、そう変わらないに違いない。

 カミラはそう考えていた。
 自分は勇者としてみんなの士気を高め、軍の力を向上させてきた。
 一方、彼も特殊な技術で魔族の軍の士気を高め、その力を引き出している。
 ある意味、彼は魔族にとっての勇者なのだ。

 でも、それでいながら彼は、『自由』――。



「勇者様」
「……」

「勇者様!」
「……え!?」

「私はさっきから呼んでいましたが」
「そ、そっか」
「あの男のことを……考えていたのですか?」
「……」

 図星だったが、カミラは答えなかった。
 しかし問いかけた若い男は、答えがなくともわかっているようだった。

「あの泉での一件から、たまに考え事をされているようですが。気になってらっしゃるのですか」
「魔族の中に一人だけ人間がいたんだ。気になるのは当たり前じゃないかな」

「今回の我々勇者パーティの任務は、あの男をイステールへ持ち帰ることです」
「わかってる」
「……生死を問わず、です」
「それも……わかってる」

「投石は一定の効果が認められるようですので、急ピッチで櫓の増設を進めているようです。
 城壁や塔だけでなく、その向こうの民間施設も狙う方針という連絡がありました」

「なるほど」
「我々の出番も、そう遠くないかもしれません」

 ――もうすぐ、会えるのだろうか。
 あの人に。
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