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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六十四話 激震する帝国
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かなかった? 思わずロイエンタールと顔を見合わせた。彼もちょっと不可思議な表情をしている。そんな俺達を可笑しそうに見ながらクレメンツ提督が話しを続けた。

「いつも図書室で本を読んでいた。軍とはまるで関係の無い本をね。“帝国経済におけるフェザーンの影響力の拡大とその限界”」
「何です、それは」

「閣下が一年の時に読んでいた本だよ、ロイエンタール提督。帝国経済におけるフェザーンの影響力を様々な数字を使って証明していた。投資額、市場における占有率、フェザーン資本で買収された企業の数などでね」
「……」

「主旨はフェザーンの影響力はあまり心配をする事は無い、そういうものだった。もっとも閣下はこう言っていたな。“数字は所詮数字でしかない、それをどう利用するかは人の力だ”と」
「……」

「正直、閣下が少尉任官した時は不思議に思ったくらいだ。もしかすると官僚になるかもしれないと思ったからね。まさか宇宙艦隊司令長官になるとは想像もしなかったよ」

そう言うとクレメンツ提督は声をあげて笑った。そして笑い終わると真面目な表情に戻った。
「もう直ぐ、メックリンガーとケスラー提督が此処に来る。あの二人が来れば少しは何か分かるだろう。何が起きているか、それが知りたいのだろう?」

「はい、噂も気になりますが、あの地上車の残骸も気になります。まさかとは思いますが……」
「落ち着くんだ、ミッターマイヤー。上に立つものが不安そうなそぶりを見せればそれだけで下は浮き足立つ。耐える事も指揮官の務めだ」
「はい」

メックリンガー、ケスラー両提督が現れたのはそれから五分ほども経ってからだった。

「なんだ、ミッターマイヤー提督、ロイエンタール提督二人も此処にいたのか」
「つい先程此処へ来たのですよ、ケスラー提督」
「士官学校教官はさすがにもてるな」
「からかうな、メックリンガー。それで何か分かったか?」

「近衛の友人にやっと連絡が取れた」
その言葉に俺、ロイエンタール、クレメンツ提督は顔を見合わせた。
「近衛に連絡が取れたのですか、外部との接触を絶っているのかと思いましたが」

「絶っているよ、ミッターマイヤー提督。幸い私は以前宮中警備の任に着いたことがある。その縁で近衛に親しくしている人間がいてね、彼と連絡が取れた」

「それで、一体何が起きた」
「フロイライン・ブラウンシュバイク、フロイライン・リッテンハイムが誘拐された」
クレメンツ提督の問いにメックリンガー提督が答えた。その答えに部屋が緊張に包まれる。

「近衛の中に誘拐犯達に協力した人間がいるようだ」
「!」
「近衛は司令長官に大きな借りが有るからな、まさか裏切る人間が出るとは思わなかったよ。彼も驚いていた」
メックリンガー提督が溜息混じりに言葉を
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