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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六十四話 激震する帝国
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混乱しているのか、それとも外部との接触を禁じられたか。だがそれ以上に気になるのは司令長官のことだ。

司令長官は今日は具合が悪いと言って部屋で休んでいる。そのこと自体は決しておかしなことではない。司令長官は元来余り丈夫な方ではない。そのため月に一度は体調不良で休んでいる。だが……。

「ビューロー少将、俺は少し席を外す。後を頼む」
「はっ」
後を頼むと言っても特に何が有るわけでもない。心配は要らないだろう、ビューローなら大抵の事はそつなくこなしてくれる。

部屋を出るとロイエンタールの所へ向かおうとしたが、彼も部屋を出て俺のところへと向かってくる所だった。彼が苦笑しながら声をかけてきた。

「どうした、ミッターマイヤー。卿も落ち着かないのか?」
「ああ、どうもな。嫌な感じがする」
「……クレメンツ提督の所へ行ってみないか?」

アルベルト・クレメンツ提督。俺達が士官候補生のとき戦略、戦術を担当する教官だった。授業も面白かったし、性格も明るく、こんな軍人になりたいと思わせてくれた人だ。今では共に敵と戦う信頼できる同僚だ。

「そうだな。クレメンツ提督なら何か知っているかもしれない」
多分知っている可能性は低いだろう。しかしクレメンツ提督の顔を見れば少しは落ち着くかもしれない。そう考えて思わず苦笑した、まるで子供だ。

クレメンツ提督の司令部に行くと奥の司令官用の部屋に通された。
「そうやって二人揃っていると昔を思い出すな」
「昔ですか?」

クレメンツ提督の言葉に答えながら俺は隣にいるロイエンタールを見た。ロイエンタールも訝しげな顔をしている。クレメンツ提督は俺達にソファーに座るように促すと言葉を続けた。

「二人とも優秀な生徒だった。参謀よりも指揮官に向いている、いずれは艦隊を率いる立場になるだろうと思ったが、その通りになった」
「恐縮です。自分が四年の時でした。提督が教官として士官学校に赴任されたのは」

ロイエンタールの言葉にクレメンツ提督は穏やかに微笑んだ。おそらく俺達が此処へ来た理由など百も承知だろう。おそらくクレメンツ提督自身不安に思っているはずだ。それにもかかわらず常に変わらぬ様を示すクレメンツ提督に正直敵わないと思った。

「早いものだ、あの時の士官候補生が今では艦隊司令官なのだからな。私も年を取るはずだ」
「我々よりも出世している方がいます。司令長官はクレメンツ提督から見てどのような生徒だったのでしょう」

クレメンツ提督は穏やかな笑みを絶やさずに答えてくれた。
「優秀な生徒だったよ、ミッターマイヤー提督。非常に意志の強い、なにか心に期する物があると感じさせる生徒だった。だが私にはヴァレンシュタイン候補生がどのような軍人になるかはちょっと想像がつかなかったな」

想像がつ
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