十九話:特別な人
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買いに行くぐだ男。
そんな彼の子供のような姿に怒るに怒れずにジャンヌも続いていく。
『すいません、焼きそば2つください』
「少し昼寝をしているがいいぞ、ご主人。今、猫の手も借りたい程に忙しいのだ。もっともキャットの手は既に猫なのだがな、ワン」
『あれ? タマモキャット?』
祭りには似合わないメイド服に身を包んだ猫のような狐のような犬のような女性。
妖艶な雰囲気が見事に野性味で損なわれているのが彼女、タマモキャットなのだ。
「おうさ、赤いマントのシェフの代わりにこの厨房に舞い降りたキューピットというところなのだな」
『狐で猫で犬でキューピット……そのブレブレなところがキャットだね』
「うむ、自分で言うのもなんだがブレブレであるな。しかし、焼きそばの味はぶれない。そこはキャットの誇りがかかっているからな。売り上げのために妥協はない!」
ぶれぶれなところがぶれない。それこそがタマモキャットである。
奇妙な生物の登場に呆気にとられ黙っていたジャンヌであるが二人の関係が気になり尋ねる。
「あの、お二人の関係は?」
「キャットとご主人は主とそれを守る者、即ち―――夫婦関係らしいぞ」
キャットの言葉にピシリと空気に罅が入る音がする。
ぐだ男はどこか禍々しい空気を放ちながらも顔だけはニコニコと笑うジャンヌを恐る恐る見る。
「ぐだ男君、詳しくお話をしてくれませんか?」
『誤解です。キャットの言葉は基本脈絡がないから!』
「その通りなのだな。ところでご主人、新しい首輪が欲しいのだが?」
「く、首輪? ぐだ男君に……そんな趣味が……」
誤解が誤解を生みぐだ男の立場がどんどんと怪しくなる。
『本当に誤解だから! そんなことしてないから!』
「ご主人、キャットの愛情たっぷり焼きそばであるぞ。だが値段は割り引かない! お金は大切なのだな」
『あ、うん。はい、お代』
「毎度である。それではイチゴパフェが如き夏の夜を楽しんでくるがいい」
修正不能な事態になりかけているぐだ男とジャンヌを何食わぬ顔で追い出すキャット。
追い出された二人は微妙な空気で黙ったまま歩き続けるが耐えきれなくなりジャンヌの方が口を開く。
「ぐだ男君はああいった動物が好きなのですか?」
『ケモ耳っていいよね―――じゃ、なかった! 誤解だからね。キャットとは如何わしい関係じゃないから』
思わず本音が零れ落ちながらも否定するぐだ男。
そんな彼をジト目で見ながらジャンヌはあることを行う。
「………わ、ワン」
手を犬の耳のように立て可愛らしく鳴くジャンヌ。
その衝撃にぐだ男は時が止まったようにジャンヌの姿を凝視する。
一方の彼女はやはり恥ずかしのかゆでだこのよ
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