言の葉 【ひまわりヒナ】
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彼の名前を呼び続けました。
会いたい、彼に会って、ちゃんと言葉をかけてあげたい。
その気持ちの一心で。
でもその中に小さく、けれど確かにある思いがありました。
『彼女よりも先に』
という思いが。
私はそれに薄々気付きながらも目を背け、ただひたすら走りました。
そして辿り着いたのは、私達が初めて出会った公園でした。
私が走り出した方向とは真逆の方向に位置するここに、私が何故辿り着いたのか?それは今でも分かりません。
とにかく走って走って、走り続けて。彼の為にと走った私の足は、自然とここに辿り着いていたのです。
私は最初に彼の姿を確認しました。
やっと見つけた、その嬉しさのまま彼の前に出ようとしましたが、その足はすぐに止まりました。
彼女の姿が見えたからです。
私は隠れました。何故か隠れたかった、顔を出そうという気になれなかったのです。
「高校の話、聞いたんだな」
「うん、聞いた」
うん、聞いたよ
「志望校、落ちたんだ。でも何とか受かってた高校があって、本当はそこに通ってる」
「」
なんで
「笑っちゃうだろ、入りたかった所とはレベルがかなり低い高校にさ。落ちちゃったから、入りましたってさ。入れてくださいってさ」
なんでそれを私達に????「悔しかったんだよね」
「必死に勉強したのに、約束もしたのに、それでも合格することができなかった。そんな自分が悔しかったんだよね、すっごく辛かったんだよね、悲しかったんだよね」
……分かってる
「ずっと苦しくて、その事実に真正面から受け止めることができなくて、だから誰かに言うことができなくて」
分かってる、分かっている、私も。だって、だって、私もずっと側に一緒にいて、ずっと見てきて、彼女と同じくらい、彼を知っていて。
「でもどうにかしたくて、それでも1人じゃどうにもできなくて、だからずっと私達と一緒に時間を過ごしてきたんだよね」
私は彼女と同じで、彼の行動の意味も分かることができた。
「けどどうにかしようとしても、上手くいかなかったんだよね。ずっとずっと抱え込むしかなかったんだよね」
でも……でも、私は、
「……でもね、もう大丈夫だよ」
それでも私は、
「もう抱え込まなくていいんだよ」
そのたった一言を言葉にすることができない。
私は彼女に嫉妬していた。
私と同じ分だけ、彼を知っている彼女を。
だから先に、先にと気持ちは動いていた。彼女に彼を取られてしまうのではないか、そんな恐怖が私の気持ちを動かしていた。
でも毎回それは叶わなかった。
私と彼女は似ている。
私と彼
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