第49話
[4/4]
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
いるようじゃ男じゃねぇ!
俺らは乗るぜ華雄将軍! あんたらの命、無事に向こう岸まで運んでみせらぁ!!」
「お前達……!?」
熱に当てられた水夫の代表者が豪語する。
他の水夫達が頷いているのを見ると、彼らの総意に間違いないようだ。
「では、後は麗覇様次第です」
『!』
桂花の一言で、その場に居た全員の視線が、瞑目したまま動かない袁紹に向けられた。
決行の空気が流れているが、それを決めるのは総大将である彼だ。
いくら他の者達の総意でも、彼が否と言えば否、是と言えば是である。
とりわけ、袁本初と呼ばれる男は、見た目と言動に反して慎重に事を進める特徴がある。
皆が息を呑み言葉を待つ中、袁紹は静かに口を開いた。
「名誉を返上したらいかんでしょ」
「……………………わざとだ」
「ダウト!」
結局、 華雄の熱意に負けた袁紹は、条件付で作戦の決行を許可した。
その夜、未だ豪雨が降り注ぐ中、華雄とその兵士三百人、船頭である水夫達が河岸に集結、荒れ狂う河の流れに戦慄していた。
「す、すげぇ水流だ」
「流れに身を任せたら遠くまで行けそうやんけ!」
「そうだね、二度と帰って来れないね……」
「えっ!! この大雨の中で船頭を!?」
合流したての水夫も居るようだ。有無を言わさず船に乗せられている、哀れ。
「どうしたお前達、まさか怖気づいた訳ではあるまい?」
「べらぼうめぇ! 武者震いでぃ!」
「あ、こら、姉御に何て口を利くんだ!」
「そんな口利くのはこれか? ん?」
「やめろぉ! ……やめて」
士気は上場、怖気づいている者はいない。つくづく頼りになる者達だ。
華雄はさらに彼らの士気を上げるべく、部下の槍を取りあげ、前に出る。
思い出すのは、袁紹に聞かされ感心した逸話。
「皆見ろ! この槍一つではこのように、(ベキッ!)簡単にへし折る事ができるが――」
「それが出来るのは、将軍含め少数かと……」
「鉄芯入りの柄が……さすが華雄様!」
「……………俺の愛槍」
想像していた反応とは少し違うが、華雄は構わず続ける。
「そんな槍もこうして、三本束ねれば――」
ベキベキベキィッ!!
「……」
『……』
「黙って私に付いて来い!」
『オオオオォォーーーーッッ!!』
檄は大成功だ。
[8]前話 [9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ