暁 〜小説投稿サイト〜
恋姫†袁紹♂伝
第49話
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
う。ハイリスク、ハイリターンになったわけだ。

「だが、恐ろしく分の悪い賭けになる」

 空は分厚い雨雲で覆われ月明かりは無く、刷り炭をまぶしたかのような真っ暗闇。
 この作戦は隠密性が重要になる。船で渡る際は、敵に悟られぬよう明かりの類は使えない。
 暗闇と急流の中を、水夫達の腕のみを頼りに渡る。
 
 仮に渡れたとしても問題は山積みだ。少数で奇襲する為、ギリギリまで気付かれずに敵陣に潜入する必要がある。この雨の中で視界不良とはいえ、そう簡単には見張り達を出し抜けないだろう。
 苦労して魏陣に接近した後は、軍勢約五万の中を少数で進み、投石機を見つけ出す必要がある。
 投石機は魏軍の要となる兵器だ。手練れの護衛が居ることも容易に想像できる。
 それらを退けて投石機を破壊した後、速やかに自陣まで撤退する。

「……」

 華雄達の動きを頭の中でシュミレーションしていた袁紹は、嫌な汗を額に滲まながら続けた。

 旨い事、投石機まで魏軍に悟られなかったとしても、破壊に動けば気付かれる。
 魏軍は必死に阻止しようとするはずだ、郭嘉なら万一に備えて包囲網も作るだろう。
 約五万の魏軍が、僅か数百の華雄達に牙を剥く。そうなれば突破は――

「頼む、この好機、どうしてもモノにしたいんだ!」

「何故そこまで、武功を欲する」

「……我ら元董卓軍は、どう取り繕ったところで外様の武官に過ぎない」

 華雄は大炎の副将、元華雄軍の精鋭は大炎に取り込まれ。
 大炎入りを逃した者達も、準大炎要員として切磋琢磨している。
 敵対した間柄にもかかわらず、陽国は元董卓軍を重宝してくれた。その事に不満は無い。
 だが心の片隅で、後ろめたさがあるのも事実だ。

 突然合流し大炎要員となる自分達を、古株の陽軍達はどう見るだろうか。
 大炎は陽軍の花形、言わばエリート部隊だ。そこに横から割ってはいる元敵兵。
 面白くないに違いない。事実、一部の者達から向けられる目には、厳しいものがある。
 
 だからこそ――

「だからこそ私には、私たちには、自分達が陽軍の一員であると胸を張れる何かが必要なんだ!」

「それが、この危険を伴った策による武功か」

「そうだ。いくら腕に自信があろうとも、結果が伴わなければ誰も認めてはくれない。
 我ら元董卓軍が上を目指すには、周りに認められる結果と、胸を張れる武功が必要だ!
 陽軍として生きる為に、袁陽に骨を埋める覚悟を得るために……!
 頼む、袁紹殿、私達に名誉返上の好機を授けてくれ!!」

 華雄の熱意、決意からくる覚悟に、その場に居た者達が思わず涙ぐむ。
 彼女とは犬猿の仲である詠でさえ、目頭を押さえていた。

「く……、将軍様にここまで言わせて、腰を抜かして
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ