妖精の尻尾 《後》
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コイツ等は誰なのか、火竜は何を企んでいるのか、今自分はどういった状況にいるのか。何も解らず震えが出始めたルーシィの顔が、火竜の手で無理矢理前を向かされた。
「ようこそ、我が奴隷船へ。他国に着くまで大人しくしていてもらうよ、お嬢さん」
視界いっぱいに広がる、火竜の顔。
つい先ほどまで見せていた気障ったらしさも、港町で見せていたやたらと爽やかな雰囲気もない。表情を歪めて、悪意で染めた笑みを浮かべて、嘲るようにこちらを見る男の顔。
「え!!?ボスコ……って、ちょっと……!!!妖精の尻尾は!!?」
「言ったろ?奴隷船だと。始めから商品にするつもりで君を連れ込んだんだ。諦めなよ」
「そんな……!!!」
奴隷船。商品。始めからそのつもりで。諦めろ―――。
切れ切れの単語が浮かんでは消える。冷汗が頬を伝うのが解る。騙されたのだと、解りたくもない事実を理解する。
「……!!!」
「火竜さんも考えたよな。魅了にかかってる女共は、自らケツを振って商品になる」
「へへっ」
「この姉ちゃんは魅了が効かねえみてェだし……少し調教が必要だな」
「へっへっへっ」
下卑た笑い声がする。火竜の顔、男達の表情、笑う声が、更にルーシィを追い詰めていく。
一度は明るくなった未来が一気に暗くなるような、そんな感覚がする。
(や……やだ……嘘でしょ……)
少しでも気を抜いたら、崩れ落ちてしまいそうだった。
(何なのよコイツ…!!こんな事をする奴が……)
抵抗する気力すら湧かない。俯く事しか出来ない。
そんなルーシィに、火竜の手が伸びる。ドレスのスリットから覗く右脚、太腿に付けた金銀の鍵の束が掴まれ、ジャラリと音を立てた。
「ふーん、門の鍵……星霊魔導士か」
「星霊?何ですかいそりゃ。あっしら、魔法の事はさっぱりで」
「いや、気にする事はない。この魔法は契約者以外は使えん。つまり僕には必要ないって事さ」
ジャラジャラと、火竜が鍵の束を回す。人差し指に鍵を束ねる輪を引っ掛けて、ルーシィの宝物を雑に扱う。
くるくると回して、音を立てて、言葉通りに必要ないと言わんばかりにくいっと手首を動かして―――火竜の手から飛んだ鍵の束が、開いた窓の外に消えた。
(これが妖精の尻尾の魔導士か!!!)
火竜が長い棒を手に取った。ルーシィ側に向ける先、煙に包まれたそれは鍵穴と骸骨を掛け合わせたような印を押す判子のようで、けれどただの判子などではない事は、じゅっと立てられた音が示していた
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