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エターナルユースの妖精王
妖精の尻尾 《後》
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ガマンガマン!!)

顔が引きつりそうになりながら、どうにか口を開く。
ワインの球体はゆっくりとルーシィの口元まで漂い、開いた先まであと少し――――






――――しゅばっ!!と。
立ち上がったルーシィの腕が、口元まで運ばれていたワインを叩き落とした。水っぽい音を立てて床の染みとなったワインを目で追って、火竜(サラマンダー)が不思議そうにこちらを見る。

「これはどういうつもりかしら?――――――睡眠薬よね」

対し、ルーシィの表情は厳しかった。
口元に運ばれた際に感じた違和感。それに気づかないほどルーシィも馬鹿ではない。僅かに浮つきかけていた気分が一気に引き戻される。
その問いかけに、不思議そうな表情を崩して火竜(サラマンダー)は笑った。悪びれた様子もなく言う。

「ほっほーう、よく解ったね」
「勘違いしないでよね。あたしは妖精の尻尾(フェアリーテイル)には入りたいけど、アンタの女になる気はないのよ」

その言葉。その一言に、火竜(サラマンダー)の口角が歪む。
皮を剥がすように、隠していた本性を明らかにするように、浮かべていた爽やかさを悪意へと塗り替えていく。
にたあ、と歪んだ笑みを浮かべた火竜(サラマンダー)は、言い訳の一つさえせずにこう言った。

「しょうがない()だなあ、素直に眠っていれば痛い目見ずに済んだのに…」
「え?」

返って来たのは、想定外の言葉だった。
意味を理解しようとルーシィが頭を働かせて、脳内で危険を知らせるようにサイレンが鳴り響こうと光を帯びた、瞬間。

「!!?」

左腕、二の腕の辺りを突然誰かが掴んだ。がし、と効果音が付くほどの勢いに咄嗟に目を向ければ、一目で男の手だと解るがっしりとした手がルーシィを押さえていた。
更に続けて右二の腕にも同じような感覚。掴まれた腕を力任せに横に広げられる。そちら側も、がっちりと筋肉の付いた男が腕を掴んでいた。

「おー、さすが火竜(サラマンダー)さん」
「こりゃ久々の上玉だなあ」
「な…何なのよこれ!!!アンタ達何!!?」

ソファの後ろ、閉じられていたカーテンが開く。
部屋にぞろぞろと入って来たのは数人―――いや、十数人の男達。それぞれ顔がいかつかったり下卑た表情で、腕を掴まれている事を含め、ルーシィが彼等を敵であると判断するのにそう時間はかからなかった。
パーティーに参加するには、この男達は野蛮すぎる。そもそもこのパーティーは女性限定で、船にいる男性は火竜(サラマンダー)のみのはず。だからニアはここにいない(招待されていたとしても、火竜(サラマンダー)嫌いなアイツは多分来ないだろう)。主催者側が用意した使用人、にしても見た目が悪い。この流れで、しかも女性の腕を背後から掴んで登場するのもおかしい
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