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逆さの砂時計
Side Story
少女怪盗と仮面の神父 29
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 何事であっても、深く考えずに返事をするのは無責任だ。
 だが、口を衝いて出た言葉を無かったことにする方法は……現存しない。
 「立ち会い人、神父・アーレストは儀の正当性を此処に認め、ミートリッテ=インディジオ=リアメルティを、ハウィス=アジュール=リアメルティ伯爵の正統後継者として承認致します。リアメルティ伯爵令嬢ミートリッテ。汝、アルスエルナ王国を支える一柱として己の役割に誇りを持ち、職務を全うするように」
 背後から神父の声が聞こえる。
 でも、何を言っているのか、さっぱり解らない。
 「……なに、これ? ハウィス……?」
 ハウィスの右手指先の隙間から群青色の瞳を覗く。
 二人の視線が重なり……彼女の白い頬に涙が一雫、月の光を纏って零れ落ちた。
 「ハウィス!?」
 「ごめん……なさい……」
 何がどうなっているのか。
 問い質そうとした、その瞬間。
 背後の河で突如、二本の巨大な水柱が、水粒を派手に撒き散らして高々と伸び上がった。


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