Side Story
少女怪盗と仮面の神父 29
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…
自警団が村の人達に情報を伏せた理由。
自分は人殺しの頂点に立つ暗殺者相手に啖呵を切っていたのか。
そして、そんな相手にアルフィンが捕まっている。
……酷い現実に目眩がしそうだ。
「……十三年前?」
くらくらしてきた目元を押さえて下を向くと。
ハウィスの硬い呟きが耳を突いた。
「ええ、『十三年前』です。だから、ミートリッテさんとアルフィンさんが狙われた。貴女方が交わした賭けの詳細も知っていましたよ」
賭け?
「アルフィン!? じゃあ、奴らの本当の狙いは……!」
「ハウィス」
顔を上げたミートリッテを見て、ハウィスがよろめく。
そんなハウィスの肩を、クナートが支えた。
「予期せぬイオーネさん達の介入があったにせよ……シャムロックは無事、貴女の前に指輪を届けてしまいました。これで賭けは契約へと昇華される。責務を果たしてください、ハウィスさん」
「…………っ」
「え? ちょっと、神父様」
さあ、指輪を受け取れと。
ミートリッテの右手を支えて、ハウィスに突き出すアーレスト。
「神父サマよ。賭けは俺達の負けだ。もう、どうしようも無ぇけど、今すぐここでやらせる必要は……」
「いいえ。この娘を護る余地を残したいなら立ち会い人が私だけである間に済ませてください。万が一、バーデルの人間に聴かれては困るでしょう? ためらうばかりで時機を見誤っては、最悪この娘が真っ先に殺されますよ」
ハウィスとクナートが顔を見合わせ、うつむいて唇を噛む。
「……ハウィス?」
限界まで寄せられた眉間のシワ。
閉じてなお、ぎゅうっと強く瞑られる目蓋。
握り締めた剣に反射する光の揺らぎで、彼女の震えが伝わる。
元は、シャムロックを窃盗の現行犯で捕まえる為の罠。
物的証拠である指輪を受け取るだけなのに。
何故こんなにも苦しげに躊躇するのか。
無言の葛藤が数分続き、やがて
「一歩、お控えください、アーレスト神父。ミートリッテは姿勢を正して」
ゆっくり目蓋を押し上げたハウィスは、剣身を腰帯に下げた鞘へ戻し。
背筋をピンと伸ばして、ミートリッテと正面から向かい合う。
漂う厳格な空気。
差し出していた右手が取られ、指輪を……
「…………え?」
一度は手中に収めた指輪を、何故かミートリッテの右手中指に装着し。
ハウィスはそのまま、ミートリッテの額に右手を翳した。
そして。耳を疑う言葉が、時間を止める。
「我……当代リアメルティ領主、ハウィス=アジュール=リアメルティ伯爵
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