Side Story
少女怪盗と仮面の神父 29
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格にその制服は、全然似合ってないわよ」
「俺もそう思ってる。布地は硬ぇし露出は少ねぇし見た目にも暑苦しいし、窮屈でしゃあねぇんだわ。コレ」
否定もせず右肩を回す、船室で酒瓶を呻っていた黒い目の強面男。
船室では色欲と威圧感を強調するかのように剥き出しだった筋肉が、今はアルスエルナ国軍所属騎士の制服に覆い隠されている。
ハウィスとの違いは、清廉と忠実を表す純白の布地を汚す黒い染みの量。
それから、徽章の数と装着している位置。
ハウィスの徽章は詰め襟部分と左胸の二つで、クナートは左胸に一つ。
金色の星の上で二本の剣が交差する左胸の胸章は、騎士団員の証明章。
金色の盾に赤い宝石を埋め込んだ詰め襟の襟章は、隊長級の身分を示す。
つまり……
海賊なんてモノは、最初から存在していなかったのだ。
怪盗が押し付けられた『依頼』は
『彼女(ハウィス・あいつ・ヴェラーナ・騎士隊長)』と
『彼ら(あいつら・アムネリダ達・騎士隊員)』による
シャムロック確保の為の自作自演。
軍歌の通り、軍人が怪盗から秩序を護ろうとしていただけ。
船の中、扉一枚を隔てて聴こえていた女性の声は、マーシャルの演技か。
どうりで、見覚えがないのに知ってる気がしたわけだ。
「それで? アンタ達が仕掛けた罠の通りに盗みを成功させちゃった私は、シャムロックとして処刑されるまで、アルスエルナ国軍に勾留されていれば良いの? またイオーネ達に捕まらないよう、鎖で繋いでおく?」
「……イオーネ?」
動きを止めたクナートが、「誰だそりゃ?」と目を瞬いた。
「貴女方が先ほどまで掃討に出向いていた暗殺組織の現首領ですよ。私達がここに来る前、マーシャルさんと交戦していました」
ミートリッテの肩へ両手を乗せた神父に
「「「はぁああああああああ!?!?!?」」」
男と女と子供が、間抜けな声で同時に叫ぶ。
「あっちゃあ……しばらく構ってやれなかったしな。ちと放置しすぎたか」
「そういう問題じゃないでしょう!? 大人しくしてなさいと言ったのに! 何をやってるのよ、あの子は!」
「いやいやいや!? マーシャルさんがどうこう以前にさらっと物騒な名称が聞こえたんだけど!? 暗殺組織!? 山賊とか窃盗団じゃなくて!?」
「イオーネさん自身は、元々一般の方ですよ。十三年前、バーデルの組織に拾われ、培った力で近年強引に首領の座を奪ったのだそうです」
「ご、ごうい……!? ンな、余計に怖くなる情報寄越すなぁっ!」
力で、となると、前の首領は生きていまい。
確かに危険な集団だ。
これが、バーデルの軍人が慌てて追いかけてきた…
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