第四部五将家の戦争
第六十三話 貴方がそれを誇りに思うのなら
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皇紀五百六十八年八月六日 午前第九刻 六芒郭本郭 独立混成第十四聯隊本部
第二大隊長 縦川少佐
さて、六芒郭にいる独立混成第十四聯隊は正直なところ酷く消耗した状態であった。純粋な兵数から言えばその消耗の半数近くが第二大隊に集中している。
第二大隊は
「第二大隊、縦川入ります」
本部付き幕僚達と会釈を交わしながら兵站幕僚と戦務幕僚のところへ向かう
「どうも、石井さん、山下兵站幕僚」「縦川さん」
「連隊長殿は?」
「朝の全体会議が終わってからは外に出ている。六芒郭をみてまわりたいそうだ」
帳面に顔を伏せたまま石井が唸るように言った。
「部隊の再編と補充計画について打ち合わせをしたかったのだが――伝令は出せるか?」
「兵站部やら突角塁やら出払ってますよ。他の連中も手が離せません」と山下兵站幕僚は顔を顰めた。
「まさか誰かに行って来いなんていいませんよね、俺は勘弁ですよ、それ」
「上砂がついているが、緊急時以外は六芒郭外以外の導術使用は原則禁止だからなぁ」ウンザリしたように石井が燐棒を擦り。「俺だって嫌だ。ウチの聯隊長殿はエラいさんだからなぁ。下手なこと聞いたら面倒ごとに巻き込まれるかもしれん。上砂は気に入られたみたいだが――」
それが果たして幸運なのかどうか、と若い導術少尉の行く末を占うかのように紫煙を吐き出した。
この異様な聯隊が若き中佐の私兵であるという認識は大半の者達が共有している。――そもそも駒州鎮台など五将家領邦の鎮台自体半ば私兵のそれであると認識されているこの時代においては当然のものであった。
「ならばここで待つか、どうせ貴様らも目を通すだろうしな」
「御二人は何処の生れでしたっけ?」
大隊の現状と改善すべき点を洗い直した再編案に目を通りながら山下が訪ねた。
「私か?私は皇都だ。領地を執政府に売却した位階持ちの家だったよ。五将家と特別縁があったわけでもない。偶々窪岡閣下の好意をいただけたお陰で帷幕院にいけたようなものだ。
まぁ恵まれてはいたんだろうが面倒な生れだと餓鬼の時分はおもっていたよ」
――まぁ首席幕僚殿に引っ張られてここにきてしまったのだがね。と肩をすくめて石井は縦川に視線を向けた。
「私は馬堂家領の馬問屋の次男坊だ。面倒を見ていただいた上に断絶しかけた駒州公家臣団の家名を継がせていただいたからな、大隊を預けていただいたことといい豊守様には頭が上がらんよ」
「なんだ貴様は首席幕僚と同じ口か」
石井のあからさまな言い方にも動じず縦川は首肯した。
「血筋はどうであれ同じ“子飼い”ではあるな、駒城にも馬堂にも恩義がある――山下は衆民だったな」
「私ですか?つまらん話ですよ、芳野の宿町にある寺子屋だった両親に幼年学校に
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