157部分:第二十話 力と正義その五
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第二十話 力と正義その五
「ですがそうではないのですか?」
「力が正義ならば」
「俺もデスマスクもアフロディーテも」
二人の名前も出して話してみせた。
「確かに力は正義だと考えている」
「はい」
「しかし。アーレスの世界には正義はない」
「ないのですか」
「我等はその力で弱き者を討ったりはしない」
これは断言だった。
「決してな。聖闘士が戦う相手は」
「はい」
「それは決まっています」
彼等の返答もはっきりとしたものになった。
「戦士です」
「衣をまとっているか武器を持っているか」
そうした限定がつくのだった。聖闘士は決して武器を持たない者と戦ったりはしない、これは絶対の掟である。一般市民は狙わないのだ。
「そうでなければ戦いません」
「例え何があろうとも」
「答えはそれだ」
出ているというのだった。
「確かに黄金聖闘士の力は絶大だ」
「それはその通りです」
それもまた事実だった。
「そして戦場に出ればだ」
シュラはまた語る。
「そして技を放てばそれだけで多くの犠牲が生じてしまう」
「犠牲がですか」
「我等が出る時は。犠牲が覚悟される時」
この技の絶大な威力故にだ。黄金聖闘士の技はそのどれもが異常なまでの広範囲に恐ろしいまでの、それこそ一つの国なぞ簡単に吹き飛んでしまうような力を放つ。そうした技を放てばそれだけで関係のない者まで巻き込んでしまう。これは神話の時代からなのだ。
「デスマスクの巨蟹宮の死者の顔だが」
「あの顔ですか」
「ただ奴が倒した者だけが入るとは限らない」
「デスマスク様の技に巻き込まれそのうえで命を落とした者達もですか」
「そうなると」
「このシュラも然りだ」
自分自身もだというのだった。
「エクスカリバーを放てばだ。それだけで多くの者が巻き添えになる」
「そうですね。今は荒野ですが」
「それでも。他の場所で攻撃を放てば」
「それで終わりだ」
こういうことだった。
「多くの関係のない者まで巻き込んでしまう。だが」
「だが?」
「それもまた覚悟のうえだ」
腹を括った言葉だった。
「我等黄金聖闘士は誰もがそれを覚悟して戦っているのだ」
「そうなのですか」
「その覚悟があればこそ、ですか」
「それが力だ」
だというのである。
「力には重みがある」
「ではアーレスはその重みは」
「断言できる。感じてはいない」
シュラはまだ会ったこともない、この世界にもまだ姿を現わしていないアーレスという神についてここまで断言した。しかもそれは偏見などでもなかった。
「ただ。己の力で。その望むことをしようとしているだけですか」
「それだけなのですか」
「それは正義ではない」
ここまで話したうえでそこに至るのだった
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