暁 〜小説投稿サイト〜
【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第六章 滅亡、そして……
最終話 マッサージ師、魔界へ
[4/4]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
?」

 そう言ったのは、いつの間にか魔王の隣にいたルーカスだ。
 もちろんぼくの気持ちは固まっている。

「覚悟はもうできたよ。何だってする」
「ふふふ、それでよい」

 ルーカスは満足そうに笑った。

 彼に学ぶことは大きかったと思う。
 お世辞にも『〜長』や『〜司令長官』というガラではなかった。
 本来は趣味に没頭してのんびり過ごしたい――そんな性格だ。

 しかし、彼はここまで立派に職務を全うしてきた。
 決して能力を十分に発揮できるような環境ではなかったはずだが、それで気持ちを切らせてしまうことはなかった。

 そして万策尽きたと思われてからも、ご先祖様の遺志を汲み、魔族という種の保存のため、最後まで諦めずに道を模索し続けた。

 その姿勢、そのタフさ、その粘り。見事だったと思う。
 ぼくも見習わなければならない。

 これから、船旅が順調に進むとは限らないし、新天地もすぐには見つからないかもしれない。
 そして見つかったとしても、みんなの生活を軌道に乗せるのはそう簡単なことではない。
 相当な困難が待ち受けているだろう。

 でも、ぼくもまだ役に立てる。やれることがある。
 本当に最後の最後まで、みんなと一緒に頑張ろう。

「ほう、マスコットよ。本当に何でもするのだな?」
「わっ。あ、生きてたんですか? 宰相様」

「ククク、当たり前だ……。私はな、新天地で作ってみるぞ、ケンポーとやらをな。お前も人間だから少し知識があるのだろう? そのときは手伝え」

「ええ、ぼくが知っている範囲でよければ、手伝いますよ」

 珍しく宰相がやる気だ。
 憲法についてはこちらも詳しくはないが、彼はそれこそ知識ゼロのはず。
 そのときには手伝わせてもらおう。



「じゃあそろそろ出発かな? リンドビオル卿」
「はい、魔王様」
「お前には感謝する……ま、ここを去らなきゃいけないのは残念だがな」

「ふふ、魔王様。ここはもう人間の世界です。この大陸はくれてやりましょう。
 魔族は魔族で、魔族だけの世界を――そうですね……『魔界』とでも申しましょうか。我々の新しい世界を、これから築くのです」

「ほう、『魔界』か……。悪くない響きだな」
「ありがとうございます」

 ルーカスはそう言うと、表情を引き締め、あらためて魔王に一礼した。

「魔王様。それでは号令を」

 魔王は「よし」と答え、軽く咳払いした。
 そして、外洋のまばゆい光に向かって、叫んだ。


「新天地『魔界』に向けて、出発――!」





『マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -』−完−
[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ