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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第六章 滅亡、そして……
最終話 マッサージ師、魔界へ
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?」
そう言ったのは、いつの間にか魔王の隣にいたルーカスだ。
もちろんぼくの気持ちは固まっている。
「覚悟はもうできたよ。何だってする」
「ふふふ、それでよい」
ルーカスは満足そうに笑った。
彼に学ぶことは大きかったと思う。
お世辞にも『〜長』や『〜司令長官』というガラではなかった。
本来は趣味に没頭してのんびり過ごしたい――そんな性格だ。
しかし、彼はここまで立派に職務を全うしてきた。
決して能力を十分に発揮できるような環境ではなかったはずだが、それで気持ちを切らせてしまうことはなかった。
そして万策尽きたと思われてからも、ご先祖様の遺志を汲み、魔族という種の保存のため、最後まで諦めずに道を模索し続けた。
その姿勢、そのタフさ、その粘り。見事だったと思う。
ぼくも見習わなければならない。
これから、船旅が順調に進むとは限らないし、新天地もすぐには見つからないかもしれない。
そして見つかったとしても、みんなの生活を軌道に乗せるのはそう簡単なことではない。
相当な困難が待ち受けているだろう。
でも、ぼくもまだ役に立てる。やれることがある。
本当に最後の最後まで、みんなと一緒に頑張ろう。
「ほう、マスコットよ。本当に何でもするのだな?」
「わっ。あ、生きてたんですか? 宰相様」
「ククク、当たり前だ……。私はな、新天地で作ってみるぞ、ケンポーとやらをな。お前も人間だから少し知識があるのだろう? そのときは手伝え」
「ええ、ぼくが知っている範囲でよければ、手伝いますよ」
珍しく宰相がやる気だ。
憲法についてはこちらも詳しくはないが、彼はそれこそ知識ゼロのはず。
そのときには手伝わせてもらおう。
「じゃあそろそろ出発かな? リンドビオル卿」
「はい、魔王様」
「お前には感謝する……ま、ここを去らなきゃいけないのは残念だがな」
「ふふ、魔王様。ここはもう人間の世界です。この大陸はくれてやりましょう。
魔族は魔族で、魔族だけの世界を――そうですね……『魔界』とでも申しましょうか。我々の新しい世界を、これから築くのです」
「ほう、『魔界』か……。悪くない響きだな」
「ありがとうございます」
ルーカスはそう言うと、表情を引き締め、あらためて魔王に一礼した。
「魔王様。それでは号令を」
魔王は「よし」と答え、軽く咳払いした。
そして、外洋のまばゆい光に向かって、叫んだ。
「新天地『魔界』に向けて、出発――!」
『マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -』−完−
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