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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第六章 滅亡、そして……
第68話 種の保存
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うだな」
「……」
魔族の都に『人間の住む地』という名前を付ける――
一体どんな思いを込めたのだろう。
本当は人間と共存したかった、という思いか。
それとも、魔族は人間の進化形、本当は自分たちこそが生き残るべき真の人間なのだという反抗的な思いからなのか。
「マコトよ。お前の考えていることはわかるぞ」
「……」
「そこにひねくれた意味はない。いずれまた一緒に住めるときが来れば――そのような希望から名付けたと聞いている。
ずっと先の世代になれば、共存のためのよい知恵をお互いに持つかもしれない。そのような希望も当時の魔族にはあったということだ……結局持つことはなかったわけだがな」
反射的に勇者のほうに視線を送ってしまったが、まずいと思い慌ててルーカスのほうに戻した。
「マコトよ。お前は、私のご先祖様が人間に騙されて魔国を建国したと思っているのだろう?」
「前にルーカスが『人間の罠だった』と言っていたと思ったけど。違うの?」
「それ自体はおそらく違わない。
悪条件を呑ませ、魔族を単一種族で不毛の地に隔離しておけば、いずれは弱体化していくだろう――そう考えた人間の罠であったことは間違いない。
だが、ご先祖様は決して騙されたわけではないと思っている」
「……? 他に手段がなかったということ?」
「そうだ。人間の提示した条件が罠であることは気づいていたのだと思う。だがそれを蹴って人間との混住を続けていけば、魔族という種は早い段階で滅ぶ。
よってご先祖様は『種の保存』を優先した――そういうことだったと私は考えている」
なるほど……。
「私のご先祖様は、建国以前の混住時代の話や魔国建国の秘話などを、直系子孫だけにはしっかり伝えるよう言い残している。
よって、私にはそれらについての知識があったわけだが……。私はその意味≠ずっと考えていた」
「……」
「もしかしたらご先祖様は、遠い未来に、魔族滅亡の危機が訪れることがあれば、自分がやったときのように『種の保存』のために動いて欲しい――
そのような遺志も込めたのかもしれない」
彼がそこまで言うと、昇降機が止まった。
ドアがゆっくりと開く。
目の前には――岩肌むき出しの、幅広い地下通路がまっすぐに伸びていた。
かなり暗かったが、その通路の先には、ほんの少しだけ薄明るい光が見えていた。
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