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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第六章 滅亡、そして……
第67話 あっさり……
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も突っ込む気にはなれなかった。
よく考えたら、殴られるのはおろか、彼にこうやって叱られるのも初めてだった。
「マコトよ。お前はいつだか、元の世界では行き詰まって死んだも同然だったと言っていたな?」
「うん」
「それは……本当に最後の最後まで手を尽くしたのか?」
「……」
……。
――おそらく、ノーだ。
一人だけ異種族という状況から、開業をやり直した今なら、そしてルーカスというポジティブかつ粘りのある人物を間近で見てきた今なら――わかる。
あのときは、本当にやれることを全部やったとは言い難い。
学生の頃の好成績と、教員や先輩たちからやたら褒められていた技術に満足してしまい、営業努力を怠っていた。
今思えば、チラシをもっと配ることができたかもしれないし、朝に建物の周りを掃除しながら通行人に挨拶をすることだってできた。
周辺の企業や飲食店に営業をかけに行くことだってできたはずだし、インターネットを使った集客だってもっとできたかもしれない。
法律の縛りや、その他環境的な厳しさはあったにしろ、やれることはまだあったはずだ。
それなのに、安易に「やり直しがきかない状況」「職業人としては死んだ」と結論付けてヤケになってしまっていた。
もちろん、あの時はわからなかったし、今だってルーカスがこうやって言ってくれなかったら、きちんと反省することはできなかったのかもしれないが……。
「最後まで手を尽くしては……なかったのかも」
「そうだろうな。そしてお前はこの世界でも詰んだと早合点して諦めるのか? それでは進歩がないと言われてもおかしくないな」
彼の言葉が、体の奥まで撃ち込まれているような感じがした。
ぼくは専門学校を出てからすぐに開業している。
なので、所属している団体の研究会で偉い先生から技術的な指導を受けることはあっても、叱ってくれる上司が存在したことはない。
そんなぼくにとって、彼がしてくれている説教は新鮮であり、一語一語が重かった。
だが……。
「ぼくにも、まだやれることが……?」
もはやそのような段階ではないのではないのだろうか――。
「ふふふ。私もな、軍の責任者、魔族の幹部として、きちんとあがいてみたのだ。そうしたらな、ギリギリで間に合った。
その結果、少なくとも今ここでお前が死ぬ必要はなくなった。これから私と一緒に最後まであがいてもらうぞ」
あがいてみた結果? 間に合った? その結果ぼくはここで死ぬ必要がない?
どういうこと?
「事情はゆっくり話したいところだが、残念ながら今はその時間がない。とりあえず魔王城へ向かう。見るのが一番早いだろうからな」
そう言うと、彼は勇者のほうを向いた。
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