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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第六章 滅亡、そして……
第66話 最後の相手
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そう遠くない先に、ここにも人間の兵がやってくる。
そして最終的にぼくの首は胴体から離れることになる。
ヒアリングしたことはもちろんないけれども、死刑囚の気分はこんな感じなのだろうか?
そんなことを思いながら、装備を着け終わったぼくはそのまま治療院の中で待つ。
いつだっただろうか。
やりたいところで、やりたいことを、やりたいようにやるなんて、普通はできない。だからぼくはズル≠「んだと。
そんなことを勇者に言われた記憶がある。
おそらく、ここはまだ仕事を選ぶ≠アとが困難な世界なのだろう。
例えばあの勇者にしたって、希望して勇者になったわけではない。
それこそ無理矢理に作られた¢カ在である。幼少の頃から道が決められていたのだ。
そして彼女はそれに逆らうことなく、今まで仕事を淡々とこなし、結果を出してきた。
けれども……。
ぼくはここまで、やりたいところで、やりたいことを、やりたいようにやってきている。
保護者であるルーカスが放任主義だったことや、こちらのやりたい仕事と魔族側のニーズがたまたま一致したという幸運もあったわけだが、かなりわがままが通ってきてしまった感じだ。
その結果としてこのあと訪れるであろう死があると考えれば、それは決して理不尽なこととは思わない。
ズル≠フ代償ということなのかもしれない。
やりたいところで、やりたいことを、やりたいようにやる――
それを放棄さえしていれば、この流れを回避できた。
実際、放棄できる機会は何度もあった。
でも自分の意思でそうはしなかった。
つまり、これは望んだ結末だということだ。納得はしている。
音を聞く限りでは、トーチカ代わりに使われている建物も順調に潰されているようで、段々と戦の音が近く、大きくなってきている。
そしてつい今、一人の魔族兵が現れ、
「すぐに魔王城へ! 全員魔王城に集合とのことです!」
と叫び、またすぐに慌ただしくどこかに消えた。
全員ということは。
市街戦でももう戦線が維持できないということで、いま生き残っている軍人と民間人をとりあえず一箇所に集める気なのだろう。
でも、知らせに来てくれた兵士には悪いが、ぼくはあまりここから動く気になれなかった。
このまま待つことにしよう。
もう戦としては終わっている。
この先は王都のどこで死ぬかの違いでしかない。
***
どれくらい時間が経っただろう。
今度は外から、先ほどとは違う足音と、鎧特有の金属音が聞こえてきた。
恐らく、魔族ではない。
魔族兵はそこまで装備に金属を使用している者はいない。
いよいよやってきたか?
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