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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第六章 滅亡、そして……
第66話 最後の相手
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 首を切り離してくれる人間が。

 その足音は治療院の扉の前で止まった。
 ぼくは鍵のかかっていない入口の扉をじっと見つめる。
 蹴破られるのかと思ったが、扉は普通に開いた。

「……マコト……見つけた……」

 ってまたアンタかいな。

「なんでここがぼくの治療院ってわかったの。教えたことはなかったと思うけど」
「はあ……はあ……探したんだ……」

 紋章入りの全身白の鎧、勇者。
 彼女は少し前かがみで、鎧の肩当てを大きく上下させていた。

「なるほど、それで息が切れてるんだ。でもすごい嗅覚だね」
「他の……人間が来る前に……私がマコトを見つけようと……」
「何でさ」

「ダルムントを発つ前に……なんとかマコトを助命できないか、司令官に頼んでみたんだ」
「ええ? そんなことを頼んでくれてたんだ? って、どう考えても無理でしょ。それ」
「うん……ダメだった……」

「そうだろうね。オーケーが出たら逆に怖いよ」
「何度頼んでもダメだったんだ……
 だから……他の人間に殺されるくらいなら……私と戦って死んでほしい」

 はい?

「いや、できれば相手は別の人でお願いしたいかなと――」
「なんでよっ!」

「なんでと言われても。できれば知らない人のほうが」
「ダメだ……!」
「とりあえず知り合いはちょっと勘弁」
「……ダメなんだ……私じゃないと……」

「あの。前から思ってたんだけどさ」
「?」
「きみってさ」
「うん」
「結構ヘンタイだよね」

 一応、彼女が高速で迫ってくるのは見えた。
 剣は抜いていないままで突進してきたので、特にこちらもリアクションはしなかったが。

 兜越しで来た強い衝撃。
 ぼくは広い治療院の施術室で後ろに吹っ飛ばされ、後頭部を床にぶつけた。

 視界に飛ぶ星。
 どうやらグローブで思いっきり殴られたようだ。

「痛……。なんかそういうところも相変わらずだなあ」
「キミが相変わらずバカだからだよっ」

 ……。
 まあいいか。

 よく考えたら、知り合いとはあまり戦いたくありませんというのも、これまたわがままな話だ。
 向こうがそうしたいと言うなら、そうさせてあげたほうがよいのかもしれない。

「仕方ないね。じゃあ、やろうか」

 ぼくは立ち上がり、ルーカスにもらった剣を構えた。

「剣についてはちょっとだけ習ったけど、歯ごたえはないかも。それでも、いいかな」

 彼女はコクリと頷き、剣を抜いた。
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