暁 〜小説投稿サイト〜
【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第五章 滅びゆく魔国
第63話 決壊
[1/3]
[8]
前話
[1]
次
最後
[2]
次話
「えっ……?」
人間の軍が――。
それを聞いた瞬間。後頭部から背中にかけて、何か冷たいものが通り抜けたような感覚があった。
あまりに唐突で、衝撃的な知らせだった。
「少年よ。ダルムントのほうに……人間の軍が攻めてきたというのだな?」
「はい! 総攻撃が始まっています!」
「そちらのほうに来たのか……謀られたか……」
……。
「な、何で……」
小さくそう呟かれた声。
ぼくはその声の主である勇者のほうを見た。
「ち、違う! 何も――!」
「勇者様の言うとおりだ。我々も――」
もしかしたら、無意識にキツい視線になってしまっていたのかもしれない。
だが、彼女らが何も知らないというのはおそらく、本当だ。
敵を騙すときはまず味方から――その対象となったのだろう。
ルーカスもぼくもいない。このタイミングでの総攻撃。
みんなが、危ない。
「ルーカス。すぐ戻ろう!」
「そうだな。少年よ、よく知らせてくれた。まだ走れるか?」
「はい! 走れます!」
「よし、行くぞ」
「マコト!」
背後から勇者の悲痛な声がかかる。
「大丈夫! 疑ってないから!」
ぼくは振り返らずにそう叫ぶと、部屋を飛び出した。
彼女たちは、追いかけては来なかった。
***
間に合ってくれれば――
その思いは無残にも裏切られた。
「……!」
「まずいな」
遠くからでもすぐにわかる。
水掘に人間の工作兵が橋を渡したのだろう。城門にはすでに無数の人間の兵が押し寄せている。
そして城壁のところどころに架けられた梯子。
除夜の鐘のように門に打ちつけられている大きな丸太。
今すぐ突破されてもおかしくない状況に見えた。
「一刻の猶予もない。人間の兵がまとわりついていないところから中に入ろう」
ぼくたち三人は城の側面へと走った。
しかし、ここにも人間の工作部隊が到着していた。
人数は数百名か。
「だめだ。人間がいる! 裏に回――」
「いや、それでは間に合わない。ここから強引に入ろう」
弓矢の射程を考え、五十メートルほど近づいたところで一度止まる。
ここもすでに水掘には橋が渡されてしまっていた。
その手前に固まっている人間の兵の塊から「魔族だ!」「敵だ!」という声があがる。
「道を開ける」
ルーカスはそう言うと、右手のひらを掲げる。
すぐに地面の色が広範囲に赤く変わった。
ぼくは空を見た。
巨大な火の……球ではない。紡錘形の火の塊から、両翼のように左右に広く伸びる炎。
人間たちをまとめてなぎ倒すつもりで整形したら、そのような形になったのだ
[8]
前話
[1]
次
最後
[2]
次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]
違反報告を行う
[6]
しおりを挿む
しおりを解除
[7]
小説案内ページ
[0]
目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約
/
プライバシーポリシー
利用マニュアル
/
ヘルプ
/
ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ