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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第五章 滅びゆく魔国
第60話 時限爆弾
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だ。

 場はそのまま静まり返ってしまう。
 領主は沈黙を咳払いで破ると、「そうだ」と言ってぼくのほうを向いた。

「マコトとやら」
「はい?」
「まずは領主として、この都市の防衛に力を貸してくれていること、深く感謝する」
「あ、はい。ありがとうございます」
「それで……どうなのだ? お前自身は人間側から指名を受けてどう考えている?」

 領主のその質問に、他の文官からも次々に「そうだ。本人の考えはどうなのだ」という声があがる。
 そしてルーカスの眉間が少し寄るのがはっきりとわかった。
 彼にとっては想定外の流れになったようだ。

 この流れでそう聞かれてしまうと、
「なんでみんなのためにぼくが危険を冒さないといけないんです?」
 なんて言える人はいないだろう。

 まあ……もちろんぼくは最初からそんなことは思っていないし、言うつもりもない。
 もう気持ちは固まっている。

「ぼく、行くのは全然かまわないですよ」
「だめだ!」

 突然挟み込まれる女声。
 ぼくと領主が「えっ?」と言って声の主のほうを向く。

「……? 魔王様、いかがなされましたか?」
「あ、いや、何でもない」

 なんとなくこの魔王の奇行には既視感があるような気がした。
 具体的には思い出せなかったが。

 領主は気を取り直してこちらに向き直る。

「ええと、お前は構わないと思っておるのだな?」

「はい、領主様。人間側の文書の内容が信用できるのかどうか、それはぼくにはよくわかりません。
 ですが、罠じゃない――何かの事情で人間側にとっても一時的に休戦したほうが都合がよい状況になっているという可能性だって、少なからずあるわけですよね。
 ならばやってみるというのは別におかしな話じゃないと思います。罠の危険があるならば、魔族の人は出さずに、ぼく一人でも構いません」

「マコトよ。嫌なら嫌と言って構わないのだぞ」
「ぼくは別に嫌じゃないよ。大丈夫」

 ルーカスは助け舟をくれたが、「嫌じゃない」というのは本当だ。

 だいたい、万一嫌であろうが、ここでぼくが「嫌だ」というと、おそらく会議は紛糾する。いつまでも終わらない。
 最悪、軍とダルムント側で内輪揉めが始まって内部崩壊するだろう。
 ぼくにとって魔族は患者で、手伝わせてもらいたいという対象だ。そんなところは見たくない。

 ルーカスと魔王は下を向いてしまった。
 宰相もやや微妙な顔になっている。

「リンドビオル卿。本人が行ってもよいと言っておるが」
「……」

 ルーカスは諦めたような表情で顔を上げると、一つため息をついて領主に答えた。

「わかりました。では私はこれ以上の反対はいたしません。
 ですが、彼だけを行かせ
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