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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第四章 魔族の秘密
第47話 弟子
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 やや乾いた空気。
 丈の低い草原が広がる中、まっすぐに伸びる街道。

 リンブルクから南にのびているその道を二週間ほど歩くと、大きな川の河口近くにダルムントという魔国の都市があるはずである。
 ぼくはひとまずそこを目指して歩き始めた。

 が……歩きはじめること三日目、早くも窮地に陥っている。

 追手が来たとか、モンスターに襲われたとか、そのような事態が発生したわけではない。
 サバイバル能力の絶対的な不足により、魔国の都市にたどり着けそうもないのだ。

 一応賊の人には、火の起こし方や、水を確保する方法など、一通りは教わっている。
 大丈夫だろうと思ったが……甘かった。
 こういうのもマッサージと同じで、技術だ。
 やはり急にうまくできるモノではない。

 わけてもらった食料はすでに尽きている。
 この街道はすぐ横が海岸なので潮溜まりに行けば魚はとれるだろうが、火打石……何度やっても火が付かない。賊の人は簡単にやっていたのに。
 火がないと食べることができない。

 水もあと何日ももたない。
 教わった方法――葉っぱから蒸発した水分を集める方法や、草むらの朝露を集める方法、金属である兜を使って結露させる方法などを試してはいるが。
 やり方が悪いのか、思ったほど集まらない。

 食料はなくてもすぐに死ぬことはないとして、水がなくなるのはまずい。
 むむむ。

 まあ、なんとか……なるよね?
 ここ、一応ギリギリ魔国の勢力圏内だし、そのうち魔族の誰かには会えるよね? 
 いつかきっと、会えるよね?



 ***



 なんとか、ならなかった。
 五日目。とうとう水がなくなった。

 教えてもらった水確保の方法の中では、草むらから朝露を集める方法が一番効率がよかったのだが。
 すでに辺りはまばらに生える丈の低い草と灌木という、いかにも魔国らしい荒涼とした景色となってしまっている。
 これでは朝露を集めることもままならない。

 そして魔族の誰かと会う気配もまったくない。
 よく考えたら、魔族から見た場合、この街道の先は人間に取られたばかりのリンブルクなのである。
 誰かが来る可能性など最初からなかったのだ。下手に動かなければよかった。

 のどがカラカラだ。
 み、水が欲しい……。

 あ、そうだ。この辺りはだいぶカラカラだし、今ならうまく火が起こせるんじゃないか?

 火が起こせれば、兜を大鍋、膝当てを小鍋にして、蒸留で海水を真水に変えられるかもしれない。
 賊の人にそのやり方も教わっている。

 このままだと干からびる。それこそ火を見るよりも明らかだ。
 再度チャレンジしてみよう。



 街道からいったん外れ、海岸に出た。
 
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