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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第四章 魔族の秘密
第47話 弟子
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岩場の潮溜まりの近くで適当な場所を見つける。
 そして明らかに死んで乾燥している灌木を集める。

 よし、準備できた。
 左手に石を、右手に火打金を持つ。
 火口――恐らく乾燥させた麻だと思う――を石の刃部から少しだけ離して親指で押さえる。
 そして火打金でカチッと擦るように打つ。

 火花が飛んだ。
 それを繰り返していると火花が火口に飛び、小さく赤熱する。
 ここまでは毎回出来ている。問題はその後だ。

 息をふきかけ火種を大きくし、燃焼材――これも麻かな?――に移して炎に成長させる。
 これが難しすぎて上手くいかない。

 ――ふぅーふぅー。

 あ、やっぱり消えた……。

 何度か試すが、やはり一度も出来ない。
 ダメなのだろうか。

 ……。
 まあ、最後にもう一回だけやってみようかな。それでだめなら諦めよう。
 カチッ。
 よし、火口オーケー。

 ――ふぅーふぅー。

 ……お!
 炎になった。初めて成功した。
 これを集めた薪に……。

 ついたあああああ!

 よし、これをさらに大きくしてたき火に……。

 ――ヒュウウッ。

 風で消えたあああああ!



 ***



 いかん……。腹ペコと脱水でフラフラしてきた。
 もう無理だ。誰か魔族の人来てくれ……って、誰も来ないか。

 ……む?

 ぼくは潮溜まり近くの岩を背もたれにして、街道の方を向いて座っていたが、はるか右方向に、動く黒い点が二つ見えた。

 それは少しずつ大きくなっていく。
 人だ。馬に乗っている。

 ――まずい。

 残念ながら、右方向はリンブルクである。
 よってあの二人は恐らく人間。
 そして旅人がここに来るというのは不自然だ。
 手分けして探しているであろう追手のうちの一ペアか、もしくは斥候だろう。

 せっかく誰か来ても、人間では意味がない。
 いま見つかって捕まったらさすがに百パーセント殺されるだろう。
 ぼくは岩陰でやり過ごすことにした。

 兜と道具袋を持って、隠れる。
 岩が小さいけど、ちゃんと隠れられているかな。

 相手はすぐに近くまで来た。
 首をキョロキョロさせながら馬を歩かせている。かなり細かく見ているようだ。
 挙動が明らかに追手である。

 ぼくは意味もなく首を縮めて目を瞑る。
 もう十分に脱水状態なのに、冷や汗は容赦なく出てくる。
 バレませんように……。

「おい! そこに誰かいるのか!」

 速攻でバレた。
 戦うしかなさそうだ。
 剣はないのでグローブで殴る感じになりそうだが……。

 兜を着け、岩陰から出る。

「その鎧、間違いない。お前はマコトだな」

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