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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第四章 魔族の秘密
第46話 手紙
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っぱなしになって、だんだんスネや足首の前面が痛くなってくるんだと思う。
 普通の人であれば、必要なとき以外は程よく力が抜けるので、そうはなりにくいんだけどね」

 この足痛男は左下腿のスネにある筋肉の使い方があまり良くない。
 だからその箇所だけ疲労がたまりやすく、痛みが出ていた――そういうことだと思う。

「へー、なるほどなー。だがお兄さんよ。もしそうなら、こいつもうダメじゃね?
 今はお兄さんの術をやってもらって治ってるんだろうが、力がうまく抜けないっつー癖は変わらねーんだろ? また長く走れば痛くなるんじゃねーの?
 やっぱりコレ≠ゥなー?」

 リーダーはそう言い、またのど仏のあたりに寝かせた手刀を当てる仕草をした。
 足痛男が「ヒエェ」と言う。

「いや、ダメじゃないよ。さっきの足首ブラブラを毎日練習していけば、だんだん体が力を抜くことを覚えてくれるはず。
 もちろんすぐってわけにはいかないだろうから、当面は少し筋肉にハリを感じてきたら、さっき施術していたところを自分で押して、さらにストレッチをやれば大丈夫。
 そう簡単には痛くならなくなると思うよ」

 ぼくは前脛骨筋、長拇指伸筋、長指伸筋をストレッチする方法を教えた。
 いずれもストレッチがかなり難しい筋肉ではあるが、正座の状態から膝だけ持ち上げるストレッチや、立位から足の甲を下に向けてアキレス腱伸ばしの逆のようなことをするストレッチが有効である。

「あァーよかった。クビにならなくてすむわァ」
「あはは。よかったね」

 集中していたので気づいていなかったが、もうだいぶ薄暗くなってきていた。
 もう食事も済ませたし、野営の準備も終わっている。
 賊のメンバーは当番以外さっさと寝る体勢に入るようだ。

 ぼくのほうは頭がまだ仕事モードのままで興奮状態だったので、ひとまずたき火の前に座った。
 落ち着いたら寝るつもりだ。
 すると、足痛男が寄ってきた。

「お兄さん、なんかオレがお返しできることはあるかァ」
「え? いや別にお返しはいいけど? 魔国まで送ってもらうんだし、逆にこっちがお礼を言う立場だと思うけど」
「いやァ、それは仕事だから当たり前だしィ。何かお礼がしたい」
「いやいや、ホントにいいって」

「ハハハ、素直にお礼されとけって、お兄さんや」

 そう言ったのは、たき火の斜め向こうにいた当番の男だった。

「え、でも」
「おれたち賊は、受けた恩はしっかり返したいタチなんだ。受け取ってやったほうがそいつも喜ぶさ」

 足痛男がウンウンとうなずいている。

「そうなんだ……うーん。じゃあ一つ頼もうかな」

 一つ、心残りだったことをお願いすることにした。

「手紙を書いて渡すんで、そちらが帰った
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