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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第四章 魔族の秘密
第42話 人間の進化形
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はない。
 また、魔国側においても建国前の魔族に触れている文献が存在しなかったことなど、まだ説明がつかない点はある。
 だが、材料がこれだけあれば、推定するには十分足ると思う。

 魔族は人間の進化形であり、魔国が建国される前は人間と混住――その可能性が高いのではないか。

 国王は話の途中から身動きがなくなり、目を瞑って聞いていた。
 将軍フィリップスも厳しい表情のまま微動だにしない。勇者だけは落ち着かない様子でぼくと国王を交互に見ている。

 この世界では常識外であるはずのことをしゃべっているのに、国王と将軍に慌てる素振りはまったくない。
 その態度からは、ぼくの仮説は正しく、この二人はすべてを知っているような気がする。



「――以上です」

 ぼくがしゃべり終えると、しばらく静寂が謁見の間を支配した。

 そしてそれを破ったのは。
 ハッハッハッハッという国王の笑い声だった。
 やや上を向きながらのその笑いは、しばらく続いた。

「陛下……?」

 ぼくの隣にいる勇者が訝しげにつぶやく。
 国王は息継ぎなしの限界と思われるほどの長さで笑ったあと、視線をやや上方からぼくのほうに戻した。

「マコトとやら。そなたはなかなか頭の働く男のようだな」

 ああ、どうやら正解のようだ。

「ぼくは魔族の体を直接触る仕事をしていましたので……。あとは他の世界から来たせいでこの世界の人間の常識もなく、客観的に見やすかったんだと思います」
「そうか。将軍、念のために人払いをしておいて良かったな」
「そうですな」

「へ、陛下……」

 隣には再びそうつぶやく勇者。少し混乱しているか。

「勇者よ。今そなたが聞いた説は、わが国にとって、いや人間にとって、是とするものではない。よいな」
「……」

「マコトよ。お前の説、面白く聞かせてもらった」
「はあ」
「だがその内容はこの場で異端とせざるをえないものだ」

 国王は「それに」と言って続けた。

「仮にそなたの説が正しいとして、だ。何か問題があるのか?」

 そう言って口角を歪ませながらニヤリと笑う国王。
 その表情は悪魔のようにも見えた。
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