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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第四章 魔族の秘密
第39話 リンブルク陥落と、勇者の鎧
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になる」

「まあ、それで終わってしまうなら仕方ないね」
「なんで!」

 勇者が叫ぶ。

「だって魔国に戻りたいとしか思ってないし。それが無理なら――」
「魔国の都市は次々と陥落している。堅牢で知られるリンブルクも落ちた。
 おそらくお前が戻ろうがもう流れは変わらん。魔国滅亡の日が先延ばしになるだけだ。それでも今から戻ることに何か意味があるのか?」
「あるよ? 前も言ったことがあるかもしれないけど、患者さんが待ってるんだから」

 二人の表情はすでに硬い。
 空気も重たくなってきているのを感じる。

「……もしかして、キミは……脱走を考えていたとか?」
「うーん、マッチョ男にずっと見張られているからなあ。まあ逃がしてくれるんなら喜んで逃げるけど」
「そんなことはできないぞ」

「まあそうだよね。脱走するなら戦うことになるかな。勝てる気しないけど」
「……もし脱走となると、キミを再度捕らえなければならなくなる」
「そうだろうね」
「そのときは処刑以外の選択肢はなくなるんだよ?」
「それもそうだろうね」

「なんでなんだ……ここで人間に協力すればいいだけの話なのに。キミはあっさりしすぎだ! 意地を張って無駄死にしてもいいの!?」
「うん」
「バカ!」

 左の頬を引っぱたかれた。
 勇者はそのまま部屋を出て行った。

「イテテ。叩かれちゃった」
「お前が悪い」
「はは」

 頭を掻こうとして、勇者の兜を持っていたままだと気づいた。

「あ。彼女、兜を忘れていったね」
「ああ、すぐ気づいて取りに来られるだろう。勇者様本人が来るかどうかは知らないがな」

 ひとまず机の上に置いておこうと思い、立ち上がろうとした。
 しかし――。

「あれ?」

 兜の内側に、小さく何か彫ってあることに気付いた。
 製作者の名前だろうか?

「……!」
「どうした?」

 オスカー・リンドビオル。そこには、そう彫ってあった。
 これは……。
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