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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第四章 魔族の秘密
第39話 リンブルク陥落と、勇者の鎧
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とがわかる。

「うん、バッチリ。覚えが早いね」
「そうか」

 ずいぶんとうれしそうだなと思いつつ、机に再び向かおうとした。
 そのとき――。
 コンコン、とノックの音がした。

「どうぞ」
「どうぞ」

 ハモった。
 ドアを開けて現れたのは……兜をつけた勇者だった。



 ***



「あのねえ……今さら兜つけて何がしたいのさ」
「そ、そうだよ、ね」
「わかってるならさっさと脱いで」
「あっ」

 紐は締めていなかったようで、ぼくが兜を掴んで上に引っ張ると、スポッと抜けた。
 出てきたのは少し慌てたような勇者の顔。
 そして兜につられていた、わずかに茶がかかった黒髪が、少し遅れてフワリと落ちてきた。

「……」

 彼女は目を逸らせて斜め下を向いてしまう。
 普段のように堂々としていてよいと思うのだが。

 とりあえず用があって来たのだろうから、スツールに座ってもらった。
 マッチョ男も練習を中止して隣に座る。

 ぼくも勇者の兜を逆さまに抱えたまま、向き合うように座った。
 あらためて勇者の顔を見てみると、だいぶ血色がよい。

「その感じだと、眠れたようだね」
「よく眠れた。ありがとう。キミのおかげだよ」
「どういたしまして」

 やっと顔を合わせてくれた。
 視線が合ったことで調子が戻ったのか、そのままずっとこちらを見続けている。
 逆にこちらが少し照れくさくなったので、何となく一度マッチョ男のほうに視線を移した。

「おれからもあらためて礼を言う。ありがとう」
「いえいえ」

 視線を向けたのはそんな意味ではなかったが、礼を言ってきた。
 彼も彼女の様子を見て安堵しているようだ。

「で、今日は何の用事なの? 礼を言うためだけに来たんじゃないんでしょ?」
「うん。私はキミへの説得役でもあるから」

 ああ、なるほど。

「……情報提供をして人間に協力してほしい」

 やはりそうだ。
 軍としては、魔国に関する情報提供をさせなければ、ぼくを生かしたまま連れてきた意味はないのだろう。
 もちろんこちらにその気はまったくないが。

「牢から出してもらって感謝はしてるんだけどさ。やっぱり人間に情報提供するというのは無理だよ。患者を売ることになるからね。何度言われても無理」
「……」

 勇者が詰まってしまったので、今度はマッチョ男が続いてくる。

「お前、ずっと情報提供を拒否し続けると、やはり魔女として処刑されることになるぞ?
 これは脅しなどではない。軍は本気でそうするつもりだろう。今の状態もあと何日続けられるかわからない。
 どこかで気持ちを整理して人間側に協力しなければ、お前の人生が終わってしまうこと
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