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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第四章 魔族の秘密
第38話 施術に一番大事なもの
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「なんで、泣いてるの」
「キミの手は、温かくて懐かしいんだ」
「……たしかに、よく温かいとは言われるけど」
理由になっていないような気がしたので、コメントが難しかった。
ぼくはハンカチ代わりに使っていた布をポケットから取り出し、彼女の顔にかぶせてあげた。
「よくわからないけど……ここにはぼくら以外誰もいない。思いっきり泣いても、いいんじゃないかな」
そう言ったら、彼女は堰を切ったように号泣し始めた。
***
「おれは勇者様が泣いているのを初めて見た」
勇者が帰っていったあと、マッチョ男がスツールを片づけながらそんなことを言う。
こちらは返事に困る。
「そう言われても……なんで泣かれたのかわからないんだけど? 彼女のことはよく知らないしね」
「……理由は二つ思い浮かぶが」
「なんだろう」
「勇者様はお前の手が懐かしいとおっしゃられていた。
あの方は勇者として育てられるために、幼いころに両親の元から引き離されている。その頃の記憶がどれだけ残っているのかはわからないが、郷愁があったのは間違いないだろう」
「ええ? そうなんだ? 引き離されてってことは、彼女は志願して勇者になったんじゃないんだ?」
片づけ終わった彼は壁に寄りかかり、ぼくのほうを見て黙って頷いた。
……。
彼女が作られたジャンヌ・ダルクだったとは。
望んだわけでもないのに国を背負うことになったわけだ。
なんということだろう。
そのプレッシャーは想像を絶するものだったに違いない。
「一国の運命を背負わせるような役を無理矢理やらせていたんだ。ひどいな」
「勇者様は逃げずに役目を果たし続けてきたから、同情されたくはないだろうがな」
「……」
リンブルクの戦いのときを思い出す。
ぼくは彼女に「ずるい」と言われ、説教された。
あのときはいきなり何を言い出すんだろうと思ったが。
彼女がそういう生き方をしてきたのであれば、気持ちが少しわかるような気がしないでもない。
「じゃあ、もう一つの理由は?」
一つの理由の説明しかなかったので、聞いた。
「お前だろう」
「は? どういうこと?」
「わからないのはお前の勝手だ。おれに説明する義務はない」
***
この世界には月が存在しない。
夜になると、空からは星の光が唯一の光源となる。
しかし、この迎賓館は都市の中央部にあると聞いている。
そのせいだろうか。軟禁されているこの三階の部屋、その窓から顔を出すと、他の建物の窓から漏れる仄かな灯りがたくさん見えた。
当然だが、下を見ると地面までかなりの距離がある。
紐を作って降りることは
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