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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第四章 魔族の秘密
第38話 施術に一番大事なもの
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可能かもしれないが、この部屋の見張りと、建物の外の見張りの、両方の目をごまかさなければならない。
窓からの脱出を図るのであれば、タイミングが重要になるだろう。
振り返ると、勇者の様子を部屋まで見に行っていたマッチョ男がちょうど帰ってきたようだ。
彼は入口のところにいた代わりの見張りの人と交代し、いつもどおり、腕を組んで壁に寄りかかった。
「彼女は無事に眠れたんだ?」
「ああ。勇者様は普段では考えられない時間に寝付けた」
「よかったね」
「お前のおかげだ」
意外な言葉が出てきたので、少し驚いてしまった。
彼はお世辞を言うような性格には見えない。
「……何か思うところでも?」
「前に泉でお前に会った日。あの日も勇者様は早い時間に寝付いていた」
「へえ」
それは初耳だった。
だが彼はさっきぼくが施術しようとしたら嫌な顔をしていた。
前にそんなことがあったのなら、もっとぼくのことを信用してくれてもよかったのに、と思う。
疑問が顔に出てしまったのだろうか。
彼は求めてないのに話を始めた。
「実は、あの泉の件の後日、おれはお前の真似をしてみた」
「え、真似って? マッサージの?」
「そうだ。おれはお前がやるところを見ていたからな」
想像したら少しおかしくなってしまった。
なんか、かわいいな。
「結果はどうだったの?」
「おれが同じことをしても全く効果はなかった。なので、あのとき勇者様が夜に寝られたのは偶然かと思っていた……。お前のマッサージとやらの効果だとは思っていなかった」
なるほど、そういうことか。
「だが今回も勇者様は眠れた。一回だけなら偶然かもしれない。だが二回目となると偶然ではない。おれがやって効果がなかったのは、おれがやったからだったんだな」
マッチョ男はそう言うと、ため息をついた。
「ははは。簡単そうに見えたかもしれないけど、マッサージも技術だからね。剣術と同じ。一回見ただけでは同じレベルの真似はできないと思う」
「そうか……お前には失礼なことをしてしまった」
「気にしない気にしない」
表情を見ると、ぼくに対する感情はだいぶ軟化している。
ぼくに対する敵意と警戒……それはすべて勇者のためだったのだと思う。
本気で彼女のことが心配だったがゆえだったのだろう。
それならば――。
「あのさ。その真似、今後も続けたら?」
「おれがやっても効果はないことがわかっている」
「いや、それこそ一回じゃわからないよ」
「……」
「ぼくは専門学校というところでマッサージを勉強したんだけど、一番大事なのは技術よりも気持ちだって教わった」
「気持ち……か」
「うん。もちろん技術は大事なんだ
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