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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第四章 魔族の秘密
第36話 勇者、倒れる
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た。

「うん、実はそうなんだ。戦が終わって帰ってきてもなかなか眠れない。ベッドに入ってもなかなか寝付けないし、寝てもすぐ起きてしまうんだ」

 なかなか寝付けない『入眠障害』に、寝てもすぐに起きてしまう『中途覚醒』。
 不眠症の典型的な症状だ。間違いなさそうである。

「原因はストレスかもしれないね」
「ストレス?」
「精神的な緊張とかプレッシャーとか、そういう意味だよ」

「それだと眠れなくなるの?」
「うん。そう言われてるよ」
「そうなんだ……」

 むむむ。
 不眠症の原因はストレスであることが多いと言われているのだが、この世界ではその知識は広まっていないようだ。

「見ているとさ、きみは繊細な部分がある。普通の人よりも緊張が解けにくい体なんじゃないかな」
「お前、何勝手なことを――」
「いや、マコト、続けて」

 マッチョ男が割り込んできたが、勇者はそれを制し、話を続けるようぼくに促した。

「勇者だから当たり前なのかもしれないけど……きみの体は緊張状態に晒され続けることが多くて、リラックスすることを忘れてしまったんだと思う。
 忘れてしまっているから、夜に眠くならないし、ベッドで横になっても体はちっとも休んでいないんだよ」

「どうすれば……いいの?」
「体に、リラックスすることを思い出させてあげればいいのさ。忘れているだけなら、思い出すことはできるはず」

 ぼくはできるだけ簡単な表現で説明した。
 明らかに弱っている人間に、自律神経がどうだのと難解な話をするのは下策だ。

「それ、キミの技術で何とかできたり……するの?」
「うん。やらせてもらえるなら、やってみるけど」
「勇者様!」

 またマッチョ男が入ってくるが、また彼女は手のひらを向けて制した。

「頼んで、いいかな」
「うん。じゃあやってみるよ」
「いや、お前みたいな人間に勇者様を任せるわけには――」

「マッチョ男はいちいちうるさいってば……。現在の治療でうまくいっていないんだから、新しいことを試すのも必要だよ。
 すでに日中に倒れたりしているくらいだから、重症だと思う。不眠が続くと疲労がいつまでも抜けないわけだから、そのうち何が起きるかわからないよ?
 過労で人が死ぬことだってあるんだから」

「……」

「だいたい、そんなにぼくが信用できないなら、すぐ横に張り付いて見ていればいいじゃないか」
「……」
「むしろぼくはしっかり見ていて欲しいと思う。もし効果があるとわかれば、今後はきみが真似してやってくれればいいわけだからね」



 施術は横向きでやることにした。
 最初は左向きになって体の右側を上に向けてもらう。
 兜は邪魔だが、本人が外したくないということなので仕方
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