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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第三章 領土回復運動
第32話 対決 マッサージ師VS勇者
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ルでやればいい。魔国でやる必要なんかない」
「いや、ぼくは自分の技術を必要としている魔国でやるべきだと思う」
「……おかしいよ。キミはずるい!」
「おかしい? ずるい?」

 勇者の言葉にかなりの怒気が混じったことが、はっきりとわかった。
 しかしその意味はわからず、聞き返した。

「そうだよ! 人には運命とか宿命ってあると思う。
 それは避けられないし、避けない。みんなそれに従う。やりたくないことだって、やらなければいけない。
 やりたいところで、やりたいことを、やりたいようにやるなんて、普通はできない。なのにキミはそうしようとする。キミはずるい!」

「……いきなり運命だの宿命だのをきみに勝手に決められても困るよ。
 ぼくは確かにやりたいことをやっているけど。魔族の人にも求められて、後押しされて施術所を開いたんだ。それは運命や宿命じゃないというわけ?
 ぼくの施術を待っている人たちが魔国にはたくさんいる。患者を捨てて人間の国に行く? ぼくはそれこそおかしいと思うよ。そんなことするくらいならここで戦ったほうがマシだね」
「……っ!」

「勇者様! 話が通じていません。説得は無駄です。この男は殺すしかありません。もしご自身でやりづらいのであれば、ここは私が――」
「いや、わたしがやる! 下がって!」

 勇者は後ろの人間の兵士の言葉をさえぎると、剣を構えて突進してきた。
 速すぎて反応できなかった。

「ぐあっ!」

 強い衝撃と金属音。
 ぼくは吹き飛ばされた。

「……っ……」

 脳震盪か……。
 起き上がれない。

「あきらめて私と一緒にイステールに来てくれ!」
「いや……だ」
「なんでいやなんだ!」
「ぐはあっ!」

 今度は蹴り飛ばされた。
 体が二回ほどバウンドし、ヨロイと床がぶつかる音が塔に響いた。

 立ち上がらなきゃ……。
 ヨロイはぼくを守ってくれているはずだが、打撲はしているのだろう。
 痛い。体が言うことを聞かない。

 剣を杖代わりにしてなんとか立った。
 景色が回転している。
 剣から手を離したら倒れそうだ。

「――マコト!」

 後ろの階段から、聞きなれた声。
 ぼくも勇者も、後ろにいる人間の兵士も、一斉に声の方向を見た。

 げ! ……魔王じゃないか。

 しかも、鎧を着けているわけでもない、剣を持っているわけでもない。
 ブラブラと塔の様子を見に来たという感じだ。カルラたちには会わなかったのか。
 何なんだ。最悪のタイミングじゃないか。

「初めて見るが、わかるぞ。お前は勇者だな」
「私は勇者カミラ。お前は誰だ」

 ――?
 勇者は魔王の姿をまだ見たことがなかったのか?

 それは好都合だ
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