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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第三章 領土回復運動
第30話 投石櫓
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 施術の合間に、ぼくは塔の窓から外を見た。
 ずいぶんと増えた投石の櫓。
 パッと見ただけでも六台。しかも一台だったときよりも前進してきている。

 ギリギリ射程範囲内なのか、櫓を襲っている氷球。
 だが残念ながら、氷魔法だけではすぐ櫓を崩せる気配はないようだ。
 火魔法は氷に比べて射程距離が短いので届かないのか、一発も撃っているところを見ない。
 できれば燃やしたいところだろうが……。

 宰相はもうこの臨時施術所にはいない。
 投石が始まってからすぐ、従者と思われる人がここに来て「危険なので本部のほうにお下がりください」と進言したためである。

 宰相は最初渋っていた。が、従者に「あの奴隷殿のお仕事の邪魔にもなりますゆえ」とバッサリ斬られ、下がっていった。
 去り際に「お前、左遷先はどこがいい?」と従者に言っていたが……仲が悪いのだろうか?

 この塔は施術を受けている魔族の喘ぎ声でにぎやかであり、決して静かになったわけではない。
 だが宰相がいなくなって、こちらとしては少しやりやすくなった。



「施術は順調そうだな」

 ルーカスが塔を見回りに来た。

「うん、順調だよ。でも投石は大丈夫なの? 直撃を喰らった音が結構してるみたいだけど」

 ぼくは施術しながらそう答えた。
 カルラや他の弟子たちもそれぞれ彼に挨拶をしている。

「ふふふ。どうやら敵は櫓を接近させて城壁の内側の施設を狙っているようでな。魔法攻撃隊も撃ち落とすのには難儀しているようだ」
「あんまり笑いごとじゃないような」
「ふふ、まあそうだが。気分を落としても意味はない。攻撃としては非常に効果的だ。人間の判断を褒めるべきだろう」

 外城壁より中心側には、軍の仮本部や、各種施設、この都市にとどまっていた民間人が避難している建物などがある。
 城壁の破壊と突入はあえてすぐ目指さず、心理的なゆさぶりをかけてきたということか。
 でも「非常に効果的」ってことは……。

「もしかして結構ピンチだったり?」
「投石だけなら別にピンチでもない。建物を壊されるのはひたすら我慢すればいいだけの話だ。このまま私の構想通りに防衛を進めてくれれば問題はないだろう。ただ――」
「ただ?」

「当たり前だが、王都から来た兵士以外――この都市の民間人や兵士は、お前に強化されていない。
 この先パニックを起こすものが必ず出てくる……いや、もう出ているのかもしれないな」
「……」

「今回は宰相も来ている。パニックで慌てて陳情する者も続々と出てくるだろう。
 このまま私の構想通りに防衛を続けさせてもらえるとは思えない。出撃論が浮上し、城門を開いてしまうのも時間の問題かもしれないな」

「当然、そうなりそうならルーカスは反対
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