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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第三章 領土回復運動
第29話 金堀攻めと攻城兵器
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 しばらくの間、少し遠くに見える人間の布陣を眺めていた。

 穴掘り、か……。
 視力が〇.八程度のぼくでは、細かい作業状況まではわからない。
 だが陣中の前部には一箇所、人の密度が高い部分がある。そこで掘り始めていると思われる。

 櫓はすぐにわかる。あれだ。
 まだ組み途中だが、作業が急ピッチで進んでいるようだ。
 こんなに短時間に材料が調達できるはずはない。最初から準備してあり、どこかに隠していたか。

「フン。静かになったと思ったら作業してるみたいだな、人間は」
「出た……」
「だから出ちゃ悪いのかよ」

 魔王がぼくの兜のツノを掴んで乱暴に揺さぶる。
 司令長官とルーカスの方針を聞くため、城の中の臨時本部から出てきたのだろう。

 そしてなぜか、ぼくの兜を引っ張ったまま二人のところに行く。
 魔王に気づいて挨拶をする二人。

「二人ともご苦労。あれはどうなんだ?」

 魔王がそう聞くと、彼はルーカスのほうに説明を求める視線を向けた。

「ふふふ、あれは放置でよいです」
「どういうことだ?」

 真意をはかりかねたのか、魔王は再び聞く。

「まず穴掘りですが、人間の国――カムナビ国の兵法書に記載があります。『金堀攻め』と呼ばれるもので、穴を城の中に向かって掘るものです」
「それはまずいな。こちらから打って出て妨害すべきじゃないのか?」

「ふふ、魔王様。そう思わせることが真の目的であるとも書かれてあります。
 不安を煽り我々の士気を下げる、もしくは焦らせて城外におびき出そうとしているのです」
「しかし放置したら放置したで、穴が開通してどのみち危機に陥るだろが」

「問題ありません。金堀攻めはそもそも対魔族を想定した戦法ではありません。本来はもっと近くから掘るものです。
 魔法による遠隔攻撃があるのであの距離から掘っているのでしょうが、穴の開通には想像以上の時間と労力がかかり、現実的ではありません。
 放っておけば心理的効果がなかったと判断し、勝手に中止するでしょう」

「じゃあ櫓のほうは?」

「あれもイステール国の兵法書に記載がありまして、『攻城兵器』と呼ばれるものでしょう。我々との戦で使われたことはありませんが、人間の国同士での戦いがあった頃に使用実績があります。
 高く組んで弓兵などを載せて攻撃するつもりか、もしくは城を壊すために投石ができるような構造に仕上げるのかもしれません」

「それも放置していいのか?」
「はい、ひとまずは放置します。弓矢であれば盾で防がせ、投石であれば魔法で迎撃しましょう」
「魔法で迎撃……できるのか」

「するしかありません。ここで最も下策なのは打って出てしまうことです。兵力差があり過ぎますので絶対に誘い出されてはいけま
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