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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第二章 魔族YOEEEEE
第22話 ぼくは、人間
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動きが速すぎて反応できない。
 絶対にしてはいけないことなのだろうが、目をつぶってしまった。

「うあっ!」

 ガキンという金属音。そして首への強い衝撃。
 ぼくは吹き飛ばされた。地面に尻餅をつく。

 ――しまった。兜が。

 まともに喰らったためだろう。兜が飛ばされ、横に転がった。
 頭を守るものがなくなったが、追撃を防ぐべく立ち上がり、素顔のまま勇者と対峙する。
 ……が、追撃は来なかった。

「お、お前は……人間……?」

 目の色でわかったのだろうか? 勇者の動きが止まった。

「うん。ぼくは人間だよ」
「な、なぜ……」

 口元も兜で隠れているため、表情はわからない。
 だが勇者は一歩、二歩とジリジリ下がっていく。

 明らかに動揺している。チャンスだ。
 ぼくは兜を拾い上げた。

「ルーカス! 逃げよう」

 ぼくは彼の返事を聞かないまま、彼の腕を取った。
 そして背後の、森が深そうな方向へ走り出した。



 ***



 しばらく、森の中を必死に走った。
 最初は明るかった景色だったが、徐々に鬱蒼としてきた。

「マコトよ。おそらくもう大丈夫だ。勇者はヤケドの四人への看病もあるので追撃できないだろう」
「うん」

 ぼくらは全力疾走をやめ、歩くことにした。

「ルーカス……さっき、魔力切れたんでしょ」
「ふふふ、バレては仕方ない。お前のおかげで助かった。感謝する」

 なんでニヤニヤしているんだこの人は……。
 彼はずっと治癒魔法班の手伝いをしていた。勇者とやり合ったときは、最初から魔力が枯渇気味だったのだろう。

「魔力がないのにあんな派手な召喚魔法を使うとか。どういう神経してるの」

 もっと他に魔法のチョイスがあったのではないだろうか。
 さっきのは派手なだけで、エネルギー効率は悪そうな魔法だった。

「む? 召喚魔法?」
「違うんだ? 火魔神みたいな形してたから。イフリートってやつに見えたけど」
「ああ、あれは違うぞ。ただの火魔法だ」
「え?」

「ふふふ、私は魔法の扱いが自由自在すぎてな。私の手にかかれば、炎もあのような美しい姿に整形できるのだ。そして凝縮させたり爆発させることも意のままだ」
「あ、アホや……」

 なぜ親の仇を目の前にして芸術性を重視しているのか。

「ふむ。よいところを見せようとして張り切りすぎてしまったかな」
「じゅーぶんに反省してちょうだい……」

 やっぱり戦場でも普段の様子と同じだ。少し抜けている。

「しかし、私からするとお前も十分に不可解だったが」
「なんで?」
「人間と戦うことに……躊躇はなかったのか?」
「あー。そういえば、なかったね。なんでだ
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