暁 〜小説投稿サイト〜
【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第二章 魔族YOEEEEE
第19話 牢にて
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
いたようだ。
 大きくのけぞり、そのまま腰が抜けたのか床に崩れてしまった。

「大丈夫か? 初耳ということはないはずだが」
「確かに聞いてはいますが……隣にいたらびっくりしますって……」
「マコト、顔を見せるといい。顔を見れば安心するだろう」

 ルーカスがニヤニヤしながらそう言うので、兜を取った。

「どうだ、安心しただろう」
「た、たしかに」

 なんでだよ、と心の中で突っ込む。
 そして安心したはずの看守だが、立ち上がらない。

「あ……痛っ。な、なんか立てなくなったんですが」

 のけぞったときにピキッとやったか。
 ぎっくり腰だな。

「治癒魔法をかけよう。格子の前にくるといい」

 看守が芋虫のように体をくねらせて、格子の前に移動する。
 ルーカスが手をかざした。

「どうだ?」
「……うっ、すみませんあまり変わらないようです」
「ふむ。ではマコト、出番だ。
 ふふふ。ここでマコトの施術が受けられるとは幸運だな。人間ではこのようなことを『怪我の功名』と言うらしいぞ」

「うーん……効果があるかはわかりませんが、やってみましょう」

 出番だと彼は簡単に言う。
 しかし、ぎっくり腰の施術というのはかなり難易度が高い。
 世間ではだいぶ勘違いされているが、ぎっくり腰については、多くのケースでマッサージはするべきでないのだ。

 ぎっくり腰の原因は、筋断裂、椎間関節の損傷、靭帯断裂など、いろいろなケースがある。
 そしてそのいろいろ≠フ多くは、組織の損傷によるものだ。

 組織の損傷は「外傷」、つまりケガである。
 ケガであれば、マッサージで治すことは不可能だ。
 損傷箇所を強く揉んだりしたら、治るどころかますます炎上して悪化する。

 ただ。
 今回はルーカスが治癒魔法をかけた後である。
 それでも取れない痛みとなると、原因は組織の損傷ではない可能性が高い。
 さっきの治癒魔法が、そのまま鑑別の材料となっているのだ。

 施術で良くなる確率は比較的高いかもしれない……腰椎周辺の筋肉の攣りのようなものなのではないか?

「じゃあ触ります」

 いきなり腰は触らない。
 横向きのまま、まずは体の正面側。下腹部から骨盤内側、ソケイ部にある腸腰筋という筋肉と、腹筋を施術していく。
 腸腰筋は手が滑ると股間をまともに触るので注意である。

「はあぁぁっ、なんかっ、不思議なっ」
「そうだろう? 手に仕掛けはないのだがな」

 あとは太もも内側の内転筋。
 これも、ぎっくり腰のときは施術すると良いと言われている。

「うあああ――」

 そしてお尻と腰。
 激しくは揉まず、手のひらをなるべくつけて安心感を与えることを重視する。


[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ