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【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第一章 開業
第13話 座位での施術
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施術については、術者の押圧しないほうの手を相手の前に回し、胸の前を押さえさせてもらうくらいでもいい。
 ぎゅー。

「ふがあああ――――!」

 そして体の前≠煖ノめて大切となる。
 一般家庭で肩もみというと、「体の後面しか施術しない」ケースがほとんどだろうと思う。
 だが、実はそれだけでは片手落ちとなってしまう。「体の前面の筋肉も施術」しないと、治療にはならない。

 特に、職人は長時間の作業のせいで猫背になりやすい職業だ。
 猫背は肩が前に出てしまっている状態である。
 つまり、肩を前に出す働きをする体の前面の筋肉……これも施術してゆるめないと姿勢の矯正ができないということになる。

 具体的には、鎖骨の近く、胸、肩関節の前面。
 これらの諸筋を施術してゆるめ、そして胸を広げるストレッチをおこなうことで、体に正常な姿勢を思い出してもらうようにする。

 ちなみに、鎖骨上下はコリが蓄積して硬くなると付近を通る腕神経を圧迫し、手のシビレやだるさの原因になりやすい。
 なので念入りにおこなう必要がある。

「ふぐぁんぐがああ――!」

 さらに腕。
 三角筋から上腕、前腕、手に至るまでの施術も欠かせない。

「ふがああああ――――!」

 だからうっせーっちゅーねん。

 他の四人にも順番に施術をしていった。

「あああああっ――――!」
「ふぐぉおおお――――!」
「むうぉおおお――――!」
「アッ――――――――!」

 全員大絶叫である。
 これは開業したら騒音が問題になるかもしれない……と本気で心配になった。



 ***



「ふふふ……どうだ。これで文句あるまい」

 それぞれの絶叫を上機嫌で見届けたルーカスは、両腕を組んで更なるドヤ顔である。
 両隣には同じくドヤ顔のメイド長とカルラが胸を張っている。
 なんだこの絵は。

「ハァハァ、これは凄いっぺ」
「……これは……確かに……」
「認めざるをえねえな」
「これは素晴らしいでおじゃる」
「あぁあん……」

 どうやら全員に満足してもらえたようだ。
 よかった。これで内装工事もはかどることだろう。

 そしてなんと。ギルド内で宣伝もしてくれるらしい。
 まだぼくには知名度がないので、これは大変ありがたい。

「マコトには是非に魔族になって欲しいっぺ」
「……魔族になってもらえれば……怖くない……」
「そうだな。人間やめちゃえよ」
「仲間になるでおじゃる」
「同じ種族になれば交われるわよ」

 種族変更?
 機種変更みたいなノリで言われたが、そんなに簡単にできるわけがない。
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