暁 〜小説投稿サイト〜
【WEB版】マッサージ師、魔界へ - 滅びゆく魔族へほんわかモミモミ -
第一章 開業
第10話 開業計画と物件下見
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 魔王城をあとにしたぼくとルーカスは、重要な施設や通りを一巡した。
 もちろん、治療院として使えそうな物件の下見も兼ねてである。

 この国では現在ぼくしか技術者がいない。
 いきなり人間が敵国で開業するという事情も踏まえ、最初は小さく始め、軌道に乗ったら拡張していくしかないのかなと考えていた。

 だがルーカスにその話をしたら、
「スペースが余ろうが最初から大きいところでやってくれ」
 と言われてしまった。

 彼がもともとマッサージ技術を魔国に取り入れたいと考えたのは、負けが込んで荒んでいる住民の心身を潤したいという理由がある。

「とにかく時間の猶予がない」

 ということらしい。
 失敗のリスク上等で大きな物件を取り、早い段階で弟子を入れ、どんどん施術できる人数を増やしていこう――そのような方針となった。

 現状で空いているところを探すことになるため、開業地の選択に自由度がさほどあるわけではない。
 しかし運がよかったのか、王都中心部の各施設にも近く、ルーカス邸にもそこそこ近い、そして十分な広さがあるという絶好の物件を一つ見つけた。

 さっそくルーカスおよび魔王公認のパワーを使って無期限仮押さえし、この日は疲労も考え、帰って休むことになった。
 後日、カネを持っていき契約をおこなう予定だ。



 ***



「な、なにこれ……」

 たどり着いたルーカス邸は……明らかに周囲から浮いていた。

 まず木造という点である。
 気候が乾燥気味で森がそこまで多くはないせいか、周囲の建物に木造は一軒も見当たらない。建材はすべて石が使われている。
 王都見学時に外縁部や城壁外区域もチラッとは見ているが、木造はまったく見かけなかった。

 建物の大きさも、レンドルフ村にあった別荘に比べ圧倒的に小さい。
 屋根も瓦葺きになっている。
 まるで一軒だけ日光江戸村から移設したかのようだ。

 傾きつつある日の光を浴びた和風建築。
 優しさが一層際立っており、味があると言えばそのとおりなのだが……。
 意味不明である。

「これはわたしの家だ」
「いや、それはわかるんだけど。別荘とのバランスがおかしいでしょ」

「ふふふ。元は大きな館があったのだがな。いったん取り壊し、カムナビ国という大陸北東にある人間の国風の家にしてみたのだ。
 大きさよりも『わび』『さび』なるものを重視している」
「……」

 中も外観を裏切らないものだった。キッチンを除けば全部和室のようだ。

「畳だ……」
「ほう、畳を知っているのか、さすがだな」
「ぼくの世界でも使われていたからね」

 現在この家はルーカスとメイド長の二人で住んでいるらしい。
 なぜ一人なのに長≠ネのか
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