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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六十三話 交錯する想い
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その気持ちを知っていたからあの領地替えの案に飛びついた。もう戦わずに済む、そう思った。俺はフェルナーの思いに応えなかったのだ……。
「上手くいったと思ったのだがな。所詮俺は卿に及ばぬようだ」
「そんな事は無い。私は何の警戒もしていなかった。リューネブルク中将がいなかったら私は卿の手で殺されていただろう」
「そうか、運が無かったな」
フェルナーは微かに苦笑した。穏やかな表情だ、死を覚悟したのかもしれない。
「……」
「エーリッヒ、卿の悪い癖だ。誰よりも冷徹なくせに自分の事になると妙に鈍くなる」
フェルナー、そんな穏やかな顔をするな。俺に士官学校時代を思い出させるな。
「そうじゃない。あの領地替えを話した日、卿は“負けた”と言ってくれた。あの時私は卿ともう戦わずに済む、そう思った。だから……」
「俺が戦いを諦めていないなどと考えるのを放棄したか」
「ああ、多分そうだと思う」
俺の言葉にフェルナーは視線を落とした。
「負けたと言いながら最後まで戦う事を考えた俺を卑怯だと思うか?」
「いや、そうは思わない。私が甘いだけだ」
フェルナーが顔を上げ笑顔を見せた。
「そうか、礼を言うぞ、エーリッヒ。卿には卑怯者とは思われたくない」
「らしくないぞ、アントン。謀略に卑怯などという言葉は無い。謀られるほうが間抜けなだけだ」
「そうだな。卿のような甘チャンがいうと実感が出るな」
フェルナーが声をあげて笑った。甘チャン、そう言われても少しも怒りが湧かなかった。確かに俺は甘チャンだ。リューネブルクがいなかったら俺は死んでいただろう。甘チャンなのは間違いない。帝国暦 487年 11月23日、時刻は七時半になっていた……。
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