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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第百六十三話 交錯する想い
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れればどうだったろう。フェルナーは俺の暗殺など考えなかったに違いない。そう考えるだけでラインハルトに、そして彼を処断できずにいる自分に腹が立った。馬鹿たれが!

「宮中でことが起きた場合は?」
内心の怒りを押し殺して問いかけた。答えは分かっていても問わざるを得ない。何処か自虐的になっている自分がいた。

「もう分かっているだろう、卿を暗殺する。宮中で事が起きる、つまり陛下の暗殺か、エルウィン・ヨーゼフ殿下の暗殺になる。ローエングラム伯に嫌疑を掛ける事は出来ない。伯が今陛下を暗殺しても何の利益も無い」

「そうでもない。内乱を起すために陛下を暗殺するという事はありえるだろう」
「危険が大きすぎるさ、誰も信じない。どう見ても嫌疑はブラウンシュバイク公とリッテンハイム侯にかかる」

その通りだ。今朝方考えたことをフェルナーも考えたに違いない。フリードリヒ四世、エルウィン・ヨーゼフの二人を殺せば次の皇帝に就くのはエリザベートかサビーネ。一挙に逆転だ……。成功はしないだろう、だがそれでも嫌疑はかけられる。

「……」
「お二人がオーディンに行く事は無い。行けば反対する貴族達に殺されるだろう。その瞬間からブラウンシュバイク、リッテンハイムの両星系は暴発した貴族達に蹂躙される。内乱の始まりだ」

「……」
「そして行かなければ、犯人である事を認めたことになる。やはり内乱が始まることになる……」

「だから私を暗殺するのか」
「そうだ。まさか彼らがエリザベート様、サビーネ様を誘拐するとは思わなかったがね。陛下の暗殺より始末が悪い、最悪だ」
そう言うとフェルナーは“参ったよ”と呟いた。

「まだ、取り戻せないと決まったわけじゃないだろう……」
俺の言葉にフェルナーは軽く笑い声を上げた。
「甘いよ、エーリッヒ。直ぐに取り戻せるような相手にあの新無憂宮からエリザベート様、サビーネ様を誘拐できると思うかい?」
「……」

一頻り笑った後、フェルナーは生真面目な表情になった。
「誘拐首謀者のランズベルク伯から連絡があった」
「!」
「君側の奸を討つべく兵を挙げろと」
部屋の空気が一瞬で固まるのが判った。多分俺の顔は歪んでいるだろう。

「それで、なんと答えた」
「未だ準備が出来ていない、そう言ったら“これ以上は待てない。二十四時間以内に兵を挙げなければ、エリザベート様、サビーネ様を旗頭として自分達で兵を挙げる”と」

「馬鹿な、どうやって兵を挙げる。二十四時間でこのオーディンから抜け出し兵を起せるとでも思うのか? 宇宙港は既にこちらで押さえた」
嘲笑混じりにフェルナーに反論したのはリューネブルクだった。

「オーディンを抜け出す必要はありません。このオーディンで兵を挙げます」
「!」
ガームリヒ中佐…
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