第十四話 同じ父を持ちその四
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「妾の子なぞな」
「帝国ではですね」
「珍しくない、父が王ならだ」
それならというのだ。
「王族だ、紛れもなくな」
「それが帝国でのお考えですね」
「王国を見るのだ」
帝国と王国の共通の敵であるその国をというのだ。
「国王は代々漁色好みでな」
「そのお子たるや」
「どれだけいるかだ」
「そしてどのお子もですね」
「大事にしている、少なくともこの国よりはだ」
「この国では、です」
司教は太子に話した。
「やはり」
「実際にだな」
「側室のお子は。王家であっても」
「下に置かれるな」
「王国のそれよりも」
「そして妃もまた」
「お生まれになった頃からでした」
瞑目する様にしてだ、司教は太子にマイラのことを話した。
「側室のお子とされてきました」
「そのことは事実だな」
「多くの者に」
「司教がいてオズワルト卿がいてもだな」
「はい、公爵はマイラ様を敬愛しておられますが」
「他の旧教の者達もか」
「王家の姫君とは思っています」
王の子である、このことは絶対であるというのだ。
「ですが」
「それでもだな」
「はい、それでもです」
「側室の子であることはか」
「紛れもないこととしてです」
まさにというのだ。
「見なされ扱われてきて」
「そのことがあってか」
「あの様なご気質になられました」
「孤独に浸り他の者を阻み」
「学問と信仰に生きられる」
「この世を面白いとも思っていない」
太子はマイラのその考えも見抜いていた、そしてその見抜いているものをあえて司教に対して提示した。
「そうだな」
「王家にお生まれにならなければ」
「既に修道院に入っているな」
「そうした方です」
「下らない話だ」
ここまで聞いてだ、太子は否定して言った。
「実にな」
「側室のお子であることに苛まれることは」
「私にはそうとしか思えない」
やはり否定して言う。
「実にな」
「私もそう思います、マイラ様はです」
自身の教え子であり主君でもある彼女はというのだ。
「非常に聡明で純粋な気質の方だけに」
「下らないことに苛まれ心を閉ざすことはだな」
「残念なことです」
「全くだ、だが」
ここでだ、太子は司教を見据え彼自身にも言った。
「卿等は異端審問の者達とも話をしているな」
「教皇庁から派遣されている」
「そうだな」
「はい」
隠すことなくだ、司教は太子のその問いに答えた。
「その通りです」
「あの者達と付き合うことは止めておくのだ」
絶対にという言葉だった。
「それはだ」
「後ろにいる教皇庁のことがあるからですか」
「それだけではない、あの者達はやり過ぎる」
このことを指摘するのだった。
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